- 作者: 羽海野チカ
- 出版社/メーカー: 白泉社
- 発売日: 2012/03/23
- メディア: コミック
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- 順慶からもらった花束*2に次戦での勝利を誓う二階堂。
- 戻ってきたレース鳩「銀」に自らの再起を誓う順慶。
- 君を守ると誓った約束に従うことができなかったと思い込む零。
でも、一番、約束に翻弄されるのはあかりさん。
ひなちゃんのクラス担任が心労で入院したあと行われることになった三者面談。「おねいちゃんにまで学校来てもらわなくちゃいけなくなって…」と自分を責めるひなに対して、あかりは
「おねいちゃん、いくわよ
三者面談だって何だって
どこまでもひなの味方だからね」
と力強く牛肉コロッケにかじりつく。6巻でおじいちゃんと交わした約束を果たす名シーンだ。
しかし、肝心の三者面談では、いじめ相手の親子を前にして何も言えなくなってしまう。
な、情けない…私…
おじいちゃんにもお母さんにも
ひなの事は大丈夫…
任せてって言ったのに…
落ち込むあかりさんを、今度はひなちゃんが庇う。
牛肉コロッケかじりながら勝ち気なあかりさんが出た直後の回で、この話が出るのがいい。少年漫画的な展開なら、あかりさんが決意して以降は、その「気づき」だけで、その後しばらくは勝ち続けるはずのストーリーなのに、あかりさんの弱いところがまた出てしまう。人はそう簡単に変われないのだ。
それでも、たとえ結果が出なくても、伝わるものがあれば、人が動くきっかけとなる。
結果は大事だけどな…桐山
人に伝わるのは結果だけじゃない
世界は結果だけで回ってるんじゃないんだよ
先生の言葉で桐山は救われた。いや、そもそも無力感にさいなまれていた桐山は、ひなちゃんの言葉に救われていたのだった。
そのひなちゃんのいじめ問題は、新しい担任教師の積極的な働きかけもあり、表面上は解決する。
いじめた側の「かたちだけの謝罪」、もう二度としませんという「かたちだけの約束」によって…。
もちろん、それを許せるわけがない。
それでも前進はした。
全ての人が分かり合える、認め合えるわけではない。そして、時が過ぎても真っ白には戻せない部分が残る。いじめを根本的に解決することはできないのだということも、この漫画は改めて教えてくれる。
最後に、結局、直接は物語に登場しなかった「ちほちゃん」(ひなちゃんの前にいじめを受けていて、転校してしまった同級生)から、ひなちゃんのもとに手紙が届く。
「会いたい」という、ちほちゃんの言葉に涙を流し、ひなちゃんは、次の夏休みに会いに行くことを約束するのだった。
この巻の読みどころは、ストーリーの面白さもさることながら、、表情だと思う。
島本和彦『燃えろペン』に、「原稿を裏側から眺めてバランスが取れているようなら、むしろ書き直せ!」というような台詞があったのを思い出した。とにかく勢いがある。
見るたびに絵柄が異なる二階堂は、いつものことだと思いつつも、千日手が決まり、順慶にニヤリと笑いかける執念の表情に見入ってしまう。
零の「釣り目」は、もはやこれまでの羽海野チカの漫画を超えて、ますむらひろし(アタゴオル)の猫のようになっている。(一方で、トイレで顔を洗いつつ涙ぐむ名シーンもすぐに零とは分からない)
そして、なんと言ってもこの巻の表紙を務めるひなちゃん。
「こんな所、何があったって、生きて卒業さえすれば私の勝ちだ」の鬼のような形相のあと、
「先生…私 許さなくても、いいですか」のシーンでは、真鍋昌平(闇金ウシジマ君)→押切蓮介(ハイスコアガール)と変わる。
この表情の動きがあるからこそ、学校での問題がひと段落してほっとしながら、ちほちゃんの手紙を読むシーン、「夏休み遊びに来ませんか」との誘いを読むシーンでは、こちらもつられてウルウルきてしまう。
ついに次の巻では、記念対局ながらも、将棋の鬼と呼ばれる宗谷名人と対決。
尋常じゃない盛り上がりだ!
そして、こじつけだが、明日(4/13)は、正念場となった第2回将棋電王戦 第4局 塚田泰明九段 vs puella α!頑張れ塚田九段!
先崎学のライオン将棋コラム
今回のコラムはこちら。
棋士の趣味として、ここで紹介されているのはクラシック鑑賞や楽器演奏、麻雀、囲碁、競馬。先日の電王戦第二局の解説では、野月七段がサッカー部の話をしていたが、驚いたことに、野月七段は、サッカー×将棋漫画?『ナリキン!』の監修も務めているようだ。野月七段は1973年生まれと同年代なこともあり、親近感がわく。漫画も読んでみたい。
- 作者: 鈴木大四郎
- 出版社/メーカー: 秋田書店
- 発売日: 2012/09/07
- メディア: コミック
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参考(電王戦関連の将棋本特集)
- 将棋マイブームに火をつけた一冊〜米長邦雄『われ敗れたり』
- コンピュータ側の「稽古」を知る〜コンピュータ将棋協会監修『人間に勝つコンピュータ将棋の作り方』
- あから2010に心はあるのか?〜田中徹&難波美帆『閃け!棋士に挑むコンピュータ』
- 「顔」と読書の関係〜保木邦仁×渡辺明『ボナンザVS勝負脳』
- エレガントな将棋、あります〜野崎昭弘『ロジカルな将棋入門』
- 電王戦に向けておさらいの一冊〜岡崎裕史『コンピュータvsプロ棋士 名人に勝つ日はいつか』
- 努力は人を裏切らない、のか?〜大崎善生『将棋の子』
- この時機を狙ってた!〜羽海野チカ『3月のライオン』(1)
- 二階堂!タカハシ!NHK杯!〜羽海野チカ『3月のライオン』(2)
- 桐山のアタマをかち割ってやってほしいのです!〜羽海野チカ『3月のライオン』(3)
- やっと少年漫画っぽくなってきた〜羽海野チカ『3月のライオン』(4)
- 突然の超展開におろおろ〜羽海野チカ『3月のライオン』(5)
- 登場人物それぞれが生きている〜羽海野チカ『3月のライオン』(6)