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塩野七生『ローマ人の物語7(勝者の混迷(下))』★★★☆

ローマ人の物語 (7) ― 勝者の混迷(下) (新潮文庫)
盛りだくさんの巻。
この読書録は自分の脆弱な記憶力を補う意味もあるのだが、あらすじを書こうにも出来事が多すぎて書けない。簡単に書くとすれば、こうか?
内外の戦いに追われながらもスッラは、「民衆派」から政権を奪い返し、元老院体制の再活性化を実現する。しかし、その死後、スッラ体制は、ローマの版図の拡大に伴って、ポンペイウスを始めとする人らによって内側から崩れていったのだった・・・。
さて、今回、多くの人物が登場するが、塩野七生は彼らを以下のように分類する。

軍隊を率いる総司令官には、次の三つのタイプがあると思う。
第一は、自分が総指揮をとってはじめた戦いを自分で終えることのできる人。
第二は、自分でははじめなかったが、終えることはできた人。
第三は、自分が総指揮をとってはじめたのだが、しかも相当に敢闘するのだが、戦役を終えるのは他の将にしてもらうしかなかった人。(P141)

第一のグループは、本書内でも「天才」と称されるようなスッラ、ポンペイウスカエサルが入る。第二のグループにはマリウス。そして第三のグループに入るものとして、ミトリダテス戦線で大活躍したルクルスを挙げる。
このルクルスは、武将の才能に長じ、行政官としての能力も十分であったにも関わらず、ダメ上司だった。彼は非常に優秀な人物だったが、心の通い合いの大切さに気づかず、あと少しでミトリダテスの息の根を止めるということで、兵士達に従軍を拒否されてしまうのだ。結局、ポンペイウスに、戦果をかっさらわれる結果となるのだが、部下としっかりコミュニケーションをとっておけば、歴史の中での光り方ももっと違ったものになっただろう。ところで、ローマに戻り、政治から離れた彼は、ひたすら美食にお金を使って過ごし、今でも西欧では、豪華な食事を「ルクルス式」と呼ぶという。
さて、カエサルは、この巻では、脇役として、ちょこちょこ登場している。英雄も、若い頃は、スッラから追われイタリア中を逃げ回るような生活をしていたのだと思うと面白い。この巻後半は完全に副題通りの“ポンペイウスの時代”なのだが、8巻ではカエサルが台頭しているようだ。さあ、盛り上がって参りました、というようなラストに期待は高まります。

ローマ人の物語』これまでの軌跡