Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

励ましの言葉

ところで、ホリエモンの言葉でなくても、励ましの言葉というのは難しいものだ。
悩んでいる友人にメールなり手紙を書く時に、どうしても「頑張ってください」以外の言葉が思い浮かばず、30年間生きてもずいぶんと語彙が貧困だなあ、と自分を嘆くことがある。*1あまり人を励ました経験が無いからかもしれない。
ここら辺の感覚について非常に共感できる文章があったので引用させてもらいます。東大の玄田有史助教授の講演の内容です。*2

●「がんばれ」という言葉だけで励まされる人は少ない。
さっき言葉の話をしましたけども、実は非常に大切なことなんじゃないかと思います。私も学生などを励ます機会がありますが、よく考えてみると日本語では「がんばれ」という言葉が圧倒的に多いですよね。サッカーの中田選手がインタビュアーとうまくいかなくて、自分のホームページにいろいろ書いているということを聞きました。なぜインタビュアーとうまくいかなくなったのか、私が聞いた話では、日本のインタビュアーはすぐ「がんばってください」という、それが気に入らないというのです。何故かというと、この人たちは自分が今なにを目標としていて、何を努力していて、何を今一番苦しんでいるか分からずに、ただ「がんばってください」といっている。それはプロフェッショナルではないということなんですね。その話を村上龍さんから伺ったのですが、今、「がんばれ」という言葉だけで励まされる人は少ない。「がんばれ」という言葉自体は悪いものではなく、こういう時には「がんばれ」という言葉で勇気付けられる。それは、今その人が置かれている状態を続けることが、その人の最大唯一の目標であるときには、「がんばれ」という助言は非常に有効です。
(中略)
しかし、自分が今何に向かってファイトしていいか見つからない、何に向かっているのか、自分がどんな状況に置かれているかが分からない人に「がんばれ」と言うことは、逆にその人を不安にさせたり、緊張させたりします。

本当にそうだ。「がんばれ」という言葉は、受け取る側からすれば、非常に無責任(投げやり)に感じることがある。それは、「がんばれ」という言葉に、ベクトル(方向)の要素が無いからなのだろう。
非常に長くなるが引用を続ける。

●「がんばれ」という文化から卒業しなければいけない。
私が外国にいた頃に「日本では人を励ます時にがんばれということを言うのだけれど、それに変わるような言葉が英語にあるのか」と友人に聞いたことがあります。その友人は考えて、たぶん「パーシビア」(persevere)という言葉がそれだろうと教えてくれました。しかし、その言葉を使う人を見たことがないとも言います。じゃあ、お前の国では人を励まさないのかと聞くと、そんなことはなくて、上司が部下を励ますとか、親が子供を励ますとか、先生が生徒を励ますとか、いろんな場面があると思います。やはりいろんな状況があって、それぞれの場面にあった励まし方が大切だと思います。
例えば、「グッドラック」(Good luck)といって励ましてみたり、何か不安を持っているような場合には、「ビリーブユアセルフ(自分を信じてみろ)」(Believe yourself)と言ってみたり、とにかく行けという時には「ゴウフォーイット」(Go for it)など、やはり場面場面を見て、その人に一番必要な言葉を自分のいくつもある引き出しの中から探して言って上げられるのが、親であり、ボスであり、リーダーの役目なんだと思う。英語が良くて、日本語がダメということではないのですが、やはり我々も、何でも「がんばれ」という文化から少しずつ卒業していかなければならないと思うようになりました。
最近テレビなんかでも「うつ病」のことが多く取り上げられ、議論されるようになりましたけども、うつ病の人には「がんばれ」と言わないでくださいとカウンセリングの先生はおっしゃる。うつ病の方は思いつめることが多くて、がんばリ過ぎてしまうから、その人にまた、「がんばって」ということは、ますます追い詰めてしまうということです。私達は人を励ます言葉というものをもっときちんと考えていかなければならないとつくづく思うようになりました。

「自分のいくつもある引き出し」にしまうくらい沢山の言葉を持っているということは、自分だけでなく、いろいろな他人の気持ちになって物事を考えたことがある、ということなのだろうと思う。そうなりたい。そうでありたい。

*1:ホリエモンは「頑張る」という言葉の代わりに「チャレンジ」を用いる

*2:akillerさんのブログで知りました。http://akiller.cocolog-nifty.com/blog_of_akiller/2004/12/post_3.html玄田有史は、実は先日のweak tiesの話でも取り上げたのですが、全くの偶然です。この人の著作にも当たってみたくなりました。