Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

戸田智弘『元気なNPOの育て方』★★★★

元気なNPOの育て方 (生活人新書)
これはよい。熱い本だ。
昨年、島田恒NPOという生き方』を読んだ。ミッションから始まって理論的な部分が充実しており、これはこれで面白い本だったのだが、結局、NPOというのは何か、という部分がもやもやしていた。
そういう意味で、本書は、その「もやもや感」を晴らすよい内容だった。
「13の事例紹介+まとめ」という構成は、それこそぼやけた内容になることの方が多いと思うが、作者のNPOへの情熱が勝って、事例紹介も散漫にならずに一本筋が通ったものになっている。
冒頭でも述べられている「日本を覆う閉塞感」を取り除くことができるのは、「元気なNPO」しかないのではないか?そして、読んでいる自分もただちに社会起業家として立ち上がるべきではないか、と思わせてしまうような、作者のNPOに対する熱い思いが満ちている本だ。
 
取り上げられている事例は、

  • 自然&農林業
  • 福祉
  • 医療
  • コミュニティ
  • 教育

のカテゴリに分けられており、「教育」に関するものとしては、福岡県のNPO法人「子どもとメディア」が取り上げられている。
ノーテレビデーなどの話は、やや食傷気味ではあるが、この団体の主張は、ただ単純に「テレビを見たらだめ!」というよりはよほど説得力のあるものだった。

「この運動の目指すところは、テレビを見ないような習慣をつけましょうということではないんです。テレビを見ない日をつくることで親子の関係を見直すことと、テレビやメディアとの関わりを受け身ではなく主体的にすることです。」

したがって、メディア業界と対立関係にあるわけではなく、むしろ、「良い視聴者」を育てる立場にあるNPOだという。好感を持てるだけでなく、戦略的にも上手だなあ、と思う。そういった理念部分(ミッション)がしっかりしていなければ、人の集まるNPO法人には育たないというひとつの例なのだろう。
「教育」の分野では、ほかにも「志を持って自己実現できる若者を育てたい」という使命を持って。小中学生向け、高校生向け、大学生向けのプログラムを持ってセミナーやインターンシップのコーディネート事業を行う大阪のJaeeなどが面白かった。
作者は、公共性について、今田高敏の言葉を引いて「公共性には実践系の公共性と言説系の公共性がある」(P204)とし、縮小していく「実践系の公共性」を広げる役割を果たすのはNPOをおいてほかにない、とする。

言説系の場合、人々は自分とは直接関係の無い「遠くの大きな話」を俎上に載せるから、他人からの攻撃を受けにくい。実践系の場合、自分と直接関係のある「身近な小さな問題」に取り組むことが多いから、絶えず、そういうあなたは何なのよ!」という攻撃に脅かされる危険性を持っている。

そういう困難を認識した上で、先駆的な取り組みに挑戦していくのがNPOだというのだ。
確かに、どの団体も、自分であれば気づかないか、気づいても見過ごしてしまう、あるいは、「言説」のみで満足してしまう問題について、実践的に取り組み、いろいろな工夫をしている。取り上げられたNPOの中には、活動当初は厳密には法律違反で、あとから合法化になったようなものもある。(自家用車を用いた送迎サービスなど)これなどは、理論が先でなく、とにかく実践といういい例だろう。
自分も、ブログで、偉そうなことを書いて悦に浸ることも多いので、反省してもっと身近な問題に熱を入れて実践していけるよう頑張ります。