Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

エドワード・ズウイック『マーシャル・ロー』(1998/米)"The Siege"★★★★

JMM冷泉彰彦氏が、公開中の『ラストサムライ』に絡めて、エドワード・ズウイック監督を絶賛していたので、ツタヤで借りてみました。
あらすじについては省くが、よく言われるように911を予言したような内容。911の底に横たえる問題について、再度考えるためにはうってつけの作品。
見終えて、自分は結局、ストーリーだけではなく、立場による考え方・状況による人間心理の変化が見える作品が好きなのだと思った。(立場による人格の変化に特化したのが、ドイツ映画esだと思います。結構好き。)
本作品では、デンゼル・ワシントン演じるハバートのパートナーであるアラブ系アメリカ人フランクブルース・ウィリス演じるダヴロー将軍など、各人が、人種や職業的立場なしには出てこない様々な主張を持っている。話が進むにつれて、それぞれの対立、共に理解し得ない点が出てくる。その対立は個人的なものにとどまらず、人種・宗教・民族に関わる問題であることが問題を大きくしている。
さらに、ダヴローの「国に仕える」という考え方、ハバードの「自由」に対する考え方の違いが面白い。「国」の問題は『戦火の勇気』でも同じだったので、監督自身が追い続けたいテーマなのだろう。日本人としての「日本」をどう考えるかという視点でみることも可能な映画だと思った。
なお、タイトルの"siege"の意味が分からなかったので辞書をひいてみた。
n. 包囲(攻撃); しつこい勧誘; 〔米〕 長い苦しみの期間
これを見ると、原題をそのまま用いた場合、「長い苦しみの期間」のニュアンスが出ないことを危惧して、わざわざ"martial law"(戒厳令)と言い換えているようだ。なお、"martial"は「軍の」という意味のようだが、"martial arts"(格闘技)という言葉とは直接結びつかないなあ。