Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

福満しげゆき『僕の小規模な失敗』★★★★☆

僕の小規模な失敗
エコノミストの臨時増刊*1を買おうと会社帰りに寄った書店で一目ぼれして購入し、一気に読み終えた。一目惚れというか、自分の中の「不安アンテナ」に同調する「負のオーラ」が、その絵柄から放たれていた、という方が近い。
これまで名前も全く知らなかった人の作品だが、これは自信を持ってオススメできる本。いや、誰に、と言われると困るんだけど・・・・。
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このままじゃダメになる… すべてがダメになる大いなる予感!
恋愛ゲームに参加できず、学歴コースからも脱落し、現状打破をねらった漫画コンクールでは相手にされない、そんなマンガ家志望の主人公の将来は一体どうなる?これぞアックス版まんが道。(帯より)

内容は福満しげゆきの自伝マンガで、本人いわく「たいしたことないヤツ版の『まんが道』」なんだけど、全編に渦巻くダメダメ感が凄い。何をやってもダメな半生を振り返り、この本のラストで一瞬だけ幸せな局面を迎えるも、「しかし人生は続く」。ダメな人生は続くのだ。あとがきでは、現在コンビニでバイトしていて、しかも二日前に店長に説教されたことなんて書いているわけですよ!
でも、前半は読む方もツライ「ダメダメ話」が後半になると、結構笑える話になってきているのが、この作品のいいところ。同じダメでも少しずつ成長している。道が開けてきている。大きな幸福に辿り着かなくても、どんなにつまらない日々でも、生きていくってことは、それだけでエキサイティングなことなんじゃないか?と小さな感動、しかし確かな感動を覚える、そういう作品。
それにしても、この独特の「ひとりごと」のリズム(独白の内容はヒガミか自己否定)は、どんな上手な小説家の書く文章よりも、正確に主人公の心理状況を描写していると思う。これは得がたい才能だ。あと、コマ割りがやや細かいのは好みなのだが、本屋で横に並べられていた他の著作では、少しコマ割が大きくて「白」が多く見えたのは残念。
 
おそらく僕とそこまで年齢も変わらないであろう、という意味でも、福満しげゆきは応援していきたい。たいしたことないヤツ版の『まんが道』がどこにつながっていくのか見てみたい。続編は是非読みたいですね。

*1:国家破綻関連の特集あり。でも、そこの本屋には無かった・・・。