- 作者: 浦沢直樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 1997/12/01
- メディア: コミック
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それでは、映画を見ているように読める『MONSTER』7〜10巻の感想について、キャラクターを中心に。
リヒァルト
リヒァルトは7巻で登場し、7巻で去るキャラクターながら、
- 離れて生活してきた親子という意味で、6巻以降の物語の中心にいる大富豪シューバルトと、実の息子カールの関係を際立たせる
- 最期の会話シーンから、ヨハンの具体的な手口の巧妙さが初めて明らかになる
- その死が、教え子を亡くすことになったライヒワインの怒りを増幅させる
など、物語全体の推進力を上げる重要な人物。
実は、図書館*1の借りる順の問題で(我慢できずに)8〜10巻を先に読んでも問題無く読めたのだが、7巻を読み返して、その重要性がより際立った。
シューバルト
“バイエルンの吸血鬼”の異名を持つ実業界の大物シューバルト。この人の凄いシーンは、7巻で、直後に「笑ったんだ……あのシューバルトが笑ったんだよ。」とカールがヨハンに話をすることになる“微笑”。口元が髭で見えないまま微笑が表現されているのだが、微妙過ぎて、見返してみて初めて笑っていると分かる匙加減。絵としては口元の筋肉を上に吊りあげた感じを表現しているのだが、よくこれを漫画で…と感動。
ロベルト
ヨハンを守る謎の男ロベルト。7巻のライヒワインとの邂逅も緊迫感があが、テンマに撃たれるシーン(9巻)は最高だ。『MONSTER』は、映画を観ているようなスピード感溢れるコマ割りが魅力だが、テンマが二度引き金を引き、ロベルトが階下に落ちてから、最期の「ドサッ」までは素晴らしい。銃の重みや銃声が聞こえてきそうで、これについても漫画の力を感じた。
ルンゲ
読者にとって嫌な、そしてもどかしいキャラクターであるルンゲ。直接対面して、命を助けられているにも拘らず、テンマを犯人と決め付け執着する姿勢を全く変えない様子には、サイコなものを感じると同時に笑ってしまう。特に9巻のDr.ギーレンとの会話後の「ヨハンは存在している……テンマの頭の中に……」という独白には鳥肌&失笑。
グリマー
10巻から舞台はチェコのプラハに。フリー記者のグリマーは511キンダーハイムの院長を追って。ニナは、絵本『なまえのないかいぶつ』に関する記憶を辿って。そして、テンマはシューバルトの言葉「双子の母親はプラハで生きている」との言葉を頼りにここに来た。笑顔を絶やさず飄々としたグリマーは、逃走〜拷問〜脱出と、それだけで映画一本分の活躍をするが、爪切りを使った拷問シーンは印象的。
ニナ
7巻以降出ずっぱりなのは、ニナ。9巻では、ミュンヘン大学図書館でのセレモニー会場でヨハンを撃つ。10巻では、511キンダーハイムの元院長と、東側世界の復活を望む一味を銃殺し、さらにウイスキーボンボンに弛緩剤を混ぜ、秘密警察と癒着のあったチェコ警察の3人を毒殺した美女がニナではないか、ということを匂わせる。かつ、捜査側の中心人物スークとの関わりもある、ということで、チェコでのストーリーでは、一気に話の中心に来た。
ヨハン
ニナに撃たれて以降は行方不明という扱いで姿を見せないヨハン。図書館で『なまえのないかいぶつ』を読み、意識を失うシーン(8巻)は印象的。それにしても、この異様な本を「最近のオススメ」として紹介してくる司書はどうかと思う。
なお、ルンゲがテンマを深く知るために、違和感を覚えながらも日本文化に触れようとして、お辞儀の練習をするシーンはこれを思い出した。須藤元気が作詞作曲も担当しているとは知らなかった。底知れないものがある。
*1:図書館問題は非常に由々しき問題です。本というメディアが好きな人こそ、なるべく購入して行くべきだと思います。なるべく買うようにしてます、とだけ弁明させてください…