Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

満点の星と1%の可能性〜美内すずえ『ガラスの仮面』18

ガラスの仮面 (第18巻) (白泉社文庫)

ガラスの仮面 (第18巻) (白泉社文庫)

ガラスの仮面では、重要なシーンは、あとから何度もリフレインされます。
この18巻では、前巻の、マヤと速水真澄が二人で見たプラネタリウムの「満点の星」のシーンが何度も登場します。しかも「プラネタリウムで星を見るのは、きみと一緒にいったあれが最後だ。」などとマヤに口走ってしまうなど、速水さんの恋心はここに来てスピードを増します。
一方で、マヤに「ジェーンをひとりにしないで!あたし、桜小路君が・・・スチュワートが必要なの! 必要なの!」と言われて浮足立つ桜小路君は、一人で盛り上がっているようで可哀想です。
また、速水真澄の(この時点では)お見合い相手である鷹宮詩織(の顔)が初登場しますが、この人もやはり、速水真澄の、マヤへの絶対的な想いを強調するだけの引き立て役で、実は舞ちゃんとあまり変わらない役回りです。


さて、「忘れられた荒野」の狼少女ジェーンの「野性」を掴むために山にこもるという、ガラスの仮面らしい展開もありつつ(これも繰り返される)「紅天女への1%の可能性」=全日本演劇協会賞を取ることを目指して、非常にテンポよく物語は展開して行きます。

「紅天女」挑戦権獲得!〜美内すずえ『ガラスの仮面』19

ガラスの仮面 (第19巻) (白泉社文庫)

ガラスの仮面 (第19巻) (白泉社文庫)

ドラマチックにもほどがある展開。それが「忘れられた荒野」の初日です。
台風直撃で道路が通行止めになるほどの土砂降りの中、観客席に現われたのは速水真澄一人。
それどころか、舞台の途中で停電が起き、懐中電灯で舞台を明るくしなくてはならないほどの中、ただ一人の観客のために舞台は継続します。実際には到底あり得ない、あまりにやり過ぎな展開です。
しかし、これがあったからこそ、この巻の最後で、マヤが、やっと、やっと、やっと、やっと紫のバラの人が速水真澄であることを確信します。


さて、無事、全日本演劇協会最優秀演技賞を取ったマヤは無事に「紅天女」の挑戦権も獲得したわけですが、「イサドラ!」の円城寺まどかは、いいところ無しの咬ませ犬に終わり、ちょっと可哀想でした。


なお、面白いのは、黒沼龍三の演技指導が、月影千草のそれとは異なることです。
例えば、黒沼は自分のライターを向きを変えながら見せて、同じライターでも角度によって形がかわることを示しますが、月影先生はあくまで精神論で、このようなことはしません。また、役者そのものよりも、配役同士の関係性に重きを置いて指導をしているようです。そこが演出という役割のキモなのかもしれませんが。