Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

司馬遼太郎『新撰組血風録』★★★

(第一弾)
 文庫本といえども結構厚いものなので、半分を読んだ時点でまず書く。
 あまりに多くの人が斬られるので、まずびっくりした。自分の知っているもので譬えれば、『北斗の拳』が一番近いか。しかも新選組内の斬る斬られるも多い。現在読んだ7つの短編のうち実に5編が内部抗争を題材にしており、新選組内の人が死んでいる。斬られる主なメンバーは以下の通り
 伊東甲子太郎(「油小路の決闘」)
 芹沢鴨(「芹沢鴨の暗殺」)
 深町新作(「長州の間者」)
 武田観柳斎(「鴨川銭取橋」)
 田代彪蔵(「前髪の惣三郎」)

 そのほかに、他の短編でも登場する山崎蒸が主役の「池田屋異聞」と近藤勇の刀についての短編「虎徹」があるが、インパクトの強いのは、やはり衆道(男色)の話でひっぱる「前髪の惣三郎」だろうか。内容がミステリ的で、出来も良いが、司馬遼太郎が、このようなものを・・・というのは少し驚いた。・・・と思っていたら、この話、大島渚『御法度』の原作だという。言われてみればその通り。
 なお、この時期の薩摩・長州の動きについては、別の本や新選組のムックなどで勉強しておこうと思った。

(第二弾)
 本全体を読んでみて、最後に「菊一文字」を持ってきていることからも司馬遼太郎沖田総司をひいきにしていると感じた。実際、沖田の心の動きがよくわかる「菊一文字」「沖田総司の恋」は特に面白い。(ちなみに次に贔屓にされているのは山崎蒸だと思う。)
 その他の後半の作品は、しっくりこない井上源三郎の話「三条磧(かわら)乱刃」。近藤勇の軽率さがわかる「槍は宝蔵院流」。またもや間者の話「弥兵衛奮迅」。やはり内部での抗争が中心となる「四斤山砲」。
 文庫にしては厚かったが予想通りの面白さで、幕末小説への足がかりが出来た。