Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

呉智英『ホントの話』★★★

「人件と民主主義について」「ナショナリズムについて」「民族差別について」「現代人の愛について」「教育とマスコミについて」の4つのテーマで、呉智英が、現代日本人の考え方の基本的枠組みを取り払っていく内容。
呉智英は、初めてではないのだが、あまりにもはっきりとした物言いに少し戸惑う。毒のある本でも、日垣隆のように溢れ出すような「怒り」があれば、まだ読みやすい。また、宮台真司のように、バカな読者を諭すような文章であれば、上手に説得される。呉智英は、考え方がリベラルすぎ、感情的にもならず、言葉も最低限であり、言っている内容はわかるのだが、少し肌に合わない部分がある。この本が、細かいエッセイの寄せ集めであることも関係があるのかもしれない。
繰り返される内容としては「人権主義」に対する批判がある。ここら辺は、佐伯啓思の本にもあったように、「社会主義共産主義を唱えていた人が行き場を失って人権運動に流れ込んできた」(13p)という側面は確かにあるのだろう。フランス革命については、3つの理念「LIBERTE EGALITE FRATERNITE」について、3つ目を「博愛」と訳すのは誤訳だとして(ここまではよく聞きます)、代案として「自由・平等・義兄弟」を挙げているのにはちょっと笑った。しかし、やはりこういった社会学の領域には、日本の輸入学問の弊害がだいぶ出ているようだ。
その他、中国の呼称問題に対して、中国人による、日本人を含む有色人種に対する差別である(欧米諸国は今でも中国を「支那」=Chinaと呼んでいる)、をはじめとして、観点としてこれまで見落としていた部分からの問題提起が多く、賛成反対派別として、勉強になる。
でも、イマイチすっきりしない本でした。