Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

NHKスペシャル『子どもが見えない 第一回』僕の意見

事例紹介と、リアルタイムで書き込みのある専用掲示板からの子どもの意見紹介を中心とした番組づくり。ゲストは、この手の番組に良く出る重松清氏の他、現役教師の金森俊朗氏(50代)、義家弘介氏(30代)。3人の中では、金森氏の意見が最も共感できた。
 
個人的な結論から言ってしまえば、だいぶ番組の主旨からずれるが、以下の通り。

小学生からネットをやるのであれば、かつて高橋名人が言っていたように「一日一時間以内」などと時間を区切るべき。ネットは、より現実世界との結びつきを希薄にするという点で事態を悪化させると考える。*1

番組に寄せられる子ども達の意見には「ネットでは、自分の思っていることを伝えられる」「ネットでは本当の自分が出せる」「大人は、私達の心のSOSに気づいてほしい」「ありのままの自分を見てほしい」と言ったニュアンスのものが多かった。(勿論そうでないのもあった)
ネットでしか出せない「本当の自分」に意味はあるの?と単純に疑問に思う。*2
これは、世代論でなく、むしろ時代の話になるが、僕らがティーンネイジャーだった10〜20年前は、一時期、「自分探し」というのが流行ったように感じる。つまり、「本当の自分」がどこにあるかわからない、故に不安だった。しかし、時代がうつり、「君は君のままでいい」という意識が蔓延したからなのか、探さなくったって、そこにある「ありのままの自分」を大事にするべき、というのが主流になったような気がする。僕も、徒に「自分探し」を肯定するのではないが、結論が同じでも過程を大事にするタイプなのだ。やはり、「あの頃」のミスチルがあるからこそ、『シフクノオト』が傑作として光るんじゃないかと思う。癒しブームは、結局テイの良い「自己肯定」だし、「頑張る」ことが疎かに扱われる国は、成長しないだろーと思う。
この点は、先日こき下ろした荷宮和子に同意するところで、つらいこと苦しいことが格好悪いと思っている輩*3には、石渡治『B.B』を読ませ、金メダルを取った阿武教子座右の銘「努力は人を裏切らない」をDNAに書き込みたい。
少しずれたが、すぐに引っ越せるし、あとのことを考えずに、相手を罵れるネット上のコミュニケーションでは、つらい苦しいことあってこその「生きる喜び」は得られない。面と向かってのやりとりの中にこそ「本当の自分」を見つけるべき。(現実の人間関係の中で出せない隠れた場所には「本当の自分」は無いと思う。他者との接点の上にしか「自分」は存在しないと思う)というのが、小中学生のネット使用を制限すべきと考える一点目の理由。
 
もう一つは、金森氏が言っていたことだが、最近は「言葉のコミュニケーション」を重視しすぎる傾向があり、ネットの使用は、それを助長するという点。特に「言葉」は万能のように感じさせてしまうような魔力があるので危険だ。例えば「私達の心のSOSに気づいてほしい」というのは、何というか、自分の本心というよりは、親の世代が子どもを心配する言葉をなぞって使っている(引用している)だけのような感じを受ける。
つまり、ここでいう「言葉の魔力」とは、本当は考えていないのに、深刻に悩んでいるフリができるし、「本当の自分」が「そこ」にあるような錯覚に陥ってしまうこと。*4しかも、それが錯覚だと気づかず、どんどん悩みが深くなるのでタチが悪い。ネットによって、本来は悩まなくて良い悩みをたくさん抱えるナイーブな子ども達も多いような気がする。
 
以上が、僕がネットの利用を制限した方がいいと思う理由。しかし、番組は当然そういう風には進まなかった。番組自体が、子ども達の書き込みによって成り立っている部分が多いので当然ではある。ラストに「家族」を持ってきて、何となくネットを否定する年輩の方にも配慮したつくりになっていた。*5
僕のような意見(子どものネット利用を制限すべき)に対しては、「実際に、ネット利用を制限した場合、その代わりとして、大人が何を与えられるか」という重要な問題がある。しかし、僕の中に持ち合わせている明確な意見は今はありません。あと、お前自身はどうなのかと問われれば、僕も「ネット大好き」です。
まあ、一応明日も続きがあるので、まずはそれを楽しみにする。

*1:自戒の意味を込めて・・・

*2:まさにマトリックスの世界。現実世界ではきっと目をつむって眠っているのでしょう。

*3:「今時の若いモン」に限らない

*4:あぁ、これは自分のことだ・・・。

*5:ラストの事例は、少し番組制作者の意図に沿いすぎた話なので、ねつ造ではないかと疑ってしまう。