Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

細川貂々『ツレがうつになりまして』

ツレがうつになりまして。

ツレがうつになりまして。

図書館で借りてきたこの本をテーブルの上に置いておいたら、早速、奥さんが読んでいた。
それから数日かけてちょこちょこ読んでいたようだが、区切り区切りで「怖い」を連発。
というのも、「うつ」と聞いて思い当たる人が何人かいたからだ。

  • その1⇒僕
    • 年度末は、よく「もうだめだ」を連発。
    • 「今まで内緒にしていたけど、毎日会社を素通りして、近くの公園で鳩のえさやりをしてるんだ」などと何度も煽る。
  • その2⇒親友の夫
    • 出社していないことを共働きの妻に隠していたが、上司からの電話で発覚。現在休職中。
    • 転職を繰り返している。

特に、後者は、激務がたたって会社を辞めざるを得なくなった「ツレ」にパターンが似ていること、また、結婚当初から親友の「選択」を疑問視していたことから、「怖い」という発言につながったようだ。勿論、「僕」が「うつ」になるという可能性も十分あるわけだが、そうなったときのことを想像すると、やはり「怖い」と思ってしまったようだ。
同感だ。
特に、この本が、「行きつ戻りつしつつも、1年という長い期間をかければ、明るい未来が見えてくる」という話を強調すればするほど、憂いは深くなる。勿論、1年という期間の長さもあるが、それ以上に、ツレへのケアが、至れり尽くせりである点は、プレッシャーになる。というのは、これらのケアは、作者が在宅の仕事(漫画家)であるから可能なだけで、同じことをしようとすれば、(共働きなら)夫に合わせて妻も休職するか、(子持ちの主婦なら)膨大なエネルギーを必要とする「子育て」の一部を放棄しなくてはならないからだ。
例えば、リハビリとして「電車」に夫婦二人で乗り込んだところ、往路は大丈夫だったが、復路は「乗り物全般が無理」ということを言い出し、結局3時間かけて歩いて帰ったというエピソードがあるが、自分がケアする立場に立ったら「そんなわがままは言うな」と、ツレをタクシーに押し込めてしまうかもしれない。
そういう感覚は、自分の「うつ」への理解が不十分だから湧いてくるのかもしれないが、作者の
「てんさん」のようにふるまえるのかと言われれば、甚だ疑問だ。
あとがきで「ツレ」が自ら書いているように、辛くても治る病気である、ということが見えるのは、「うつ」の当事者や予備軍にとっては嬉しい内容であると思う。しかし、治すには、よき理解者の絶えざる協力が必要、という事実には、「相棒」にとっては、脅威に映る。
どちらの意味でも、うつを理解するのには、まずこの一冊という本なのでしょう。

最後に

この本は、なかっちさんの以下のエントリにインスパイアされて読んだものです。名言続出で、この本以上に感動しました。僕自身はまだまだ理解が不足しているので、『その後の〜』も読んでみます。