Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

日本人論×夫婦愛×膨大なサブカルネタ〜樋口毅宏『日本のセックス』

日本のセックス

日本のセックス

かつて週刊プレイボーイで「イチロー、SMを語る」という題されたインタビュー記事が掲載されたことがあった。イチローに「奥が深いですよ」とか言われると、そ、そうなのか、と思ってしまう。村上龍のSMものをかつてよく読んだ経験からすると、SMには理屈が存在し、それなりに筋が通っていて、むしろ語る人物の聡明さを倍加する。
『日本のセックス』の主人公は、中国への留学経験もあり、やはり非常に聡明で、仕事のデキる既婚女性の容子。でもスワッピングマニア。そんなスワッピング夫婦のもとに訪れる激動の出来事が、この本で語られる物語。


前半部は、まさに酒池肉林、というか延々と続く異常なセックス描写に、これは何処まで行くんだ?と思ったが、ある事件を境に状況は一変し、後半部の舞台は裁判所に。
冒頭に挙げたような理論武装で、スワッピングを行う自分たちを、選ばれた人間のように思っていた容子は、結局、彼らマニアも窮地に立たされると、自らが蔑む「日本人」的な凡庸さが顔を出すことを知り、愕然とする。そう、この本のタイトルは、この本の持つ「日本人論」としての側面を示しているのだ。
この本の面白いのは、そういった日本人論と、夫婦愛というメインストーリーのテーマとしてよく出来ているだけでなく、登場人物によって語られる膨大なサブカルネタの面白さ。前作の『さらば雑司ヶ谷』では、オザケンについて語られた部分が、いろんなところで取り上げられていたが、今回、大フィーチャーされていたのは、GREAT3『METAL LUNCHBOX』収録の「ラストソング」。数ページに渡って展開される主人公のセリフは、聴いてみたいと確実に思わせる超絶レビュー。これを機会に聴き直してみたいと思う。あと、映画も多数取り上げられていたが『アメリ』や『奇跡の海』は観てみたい。そういうカタログ的な面白さを兼ね備えているという点は、他の本では味わえない、樋口毅宏でこその魅力なのだろう。

METAL LUNCHBOX Standard of 90’sシリーズ(紙ジャケット仕様)

METAL LUNCHBOX Standard of 90’sシリーズ(紙ジャケット仕様)

アメリ [DVD]

アメリ [DVD]

奇跡の海 [DVD]

奇跡の海 [DVD]