シングル『秘密』は、いつもどおりだった。良かったがいつもどおりだった。
スガシカオは自分の核となる音楽が確立されており、それに自信を持っているため、聴く側もそれで安心するが、以前の曲と似ているなあと感じることが多い。ファンクというジャンルの特性でもあるのだろう。そこら辺は、アルバムごとに趣向を変えて、全然落ち着かない田島貴男（オリジナル・ラヴ）とは大違いだ。
とはいえ、前回のアルバムでは、非シングル曲「はじめての気持ち」「優等生」「GO！GO！」などで、スガシカオの真骨頂が如何なく発揮された。と僕は思っているので、特に心配しているわけではない。
しかし、うちの奥さんは、やはりファーストアルバム『CLOVER』がベストだという。その理由は簡単だ。『CLOVER』には、これでもかというほど「ひがみ根性」や「ストーカー的な粘着性」、もっといえば「呪い」みたいなものが詰まっているからだ。さらに、シカオシングルの中でも、1、2を争うと思う『甘い果実』（3rdアルバム『SWEET』収録）が出たときでさえ、「シカオちゃんは幸せになっちゃった。きっと彼女が出来たに違いない。キー！」とか妄想めいたことを言っていた。
結局、その数年後、実際にシカオは結婚をしたわけだけど、やや初期の粘着性が薄れたのは確かだ。今回のシングル曲「秘密」も、自分の彼女を独り占めしたいという暗い願いを中心に据えながらも、シカオにしては普通の曲だ。カップリングの「黒いシミ」も結構、オーソドックス。シカオのカップリングベストとして「ひとりぼっち」を思い浮かべる僕としては物足りない。
過剰なものを求めるというわけではないが、音楽にも本にもある程度「驚き」を求める自分としては、予定調和的に感じられるものは面白くない。その点、3曲目の「やつらの足音のバラード」はもともとの楽曲の良さもさることながら、スペイシー？なアレンジで、シングル全体にアクセントを与えている。はっきり言って、デビューシングルに『恋のバカンス』のカバーを選ぶというＷ（ダブルユー）の投げやりなくらいのセンスの悪さとは対極にある。
それでも、スガシカオには、また「ここから這い上がる」みたいな、地の底から歌うような負の感情＝スガシカオの呪いが詰まった曲もかいて欲しいなあと思います。他に書ける人いないし。
