Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

スガシカオの方程式(1)〜ぶち壊しにする歌詞〜

ライヴもあったため、ここしばらくスガシカオモードとなっていた。
田島貴男と比べて、スガシカオは、発表曲は基本的に全部追いかけているものの、とにかく情報量が多く、全く追いきれていない。したがって、スガマニアが見たら、それこそ頓珍漢なことを書いてしまう可能性が非常に高いのでこれまであまりまとめて書いてこなかったが、折角の機会なので書いてみよう。
そうだ。間違っていたら、あとで直せばいいじゃないか。所詮ブログだもの。*1

以降、スガシカオの楽曲(というか歌詞)のよさを、主に今回のアルバムをネタに、数回に渡って書き連ねる予定。
基本的には、自分のこと以外わからないので、スタンスは「何故、売れるか」ではなく「何故、自分はスガシカオの曲が好きか」がテーマ。自分でも書いていてわからなくなるので、そこんとこ注意。

歌詞における“呪い”との闘い

少し古い話になるが、SWITCHの10月号がスガシカオ特集がよかった。

驚きの「書き下ろし小説(連載第一回)」以外にも、テリー伊藤との対談、スガシカオが選ぶ10枚(音楽)、10本(映画)、10冊(本)*2など、盛り沢山だったのだが、一番印象に残ったのが、『ハチミツとクローバー』の作者、羽海野チカとの対談。*3
通常のインタビューに答えるミュージシャンではなく、二人とも「作家」なので、お互いに刺激を与え合うような部分があり、結構ハイレベルなやり取りがされていたように思う。
まずはここから抜粋。

スガ「呪いですよね。『いつの間にかかけられていた呪い』との闘いは、歌詞における僕の大きなテーマのひとつなんです。」
羽海野「私たちは誰かが作ってくれた歌詞や、教わってきた言葉に結構呪われている」
(略)
スガ「今、次の世代もその次の世代もそうなんですよ。『乗り越えろ、壁』みたいな。ちょっと待て、『壁って何だ?』みたいな。『お前に本当に壁があるのか?あるフリだけなんじゃないのか?』みたいな」

この対談の中でも取り上げられているように「漫画喫茶の薄いジュース」とか「光化学スモック警報」(「秘密」)、「シメシメと思っていた」(「Progress」)など、通常、歌詞にあまり使われないフレーズを好んで使うのは、「呪い」とのひとつの闘い方なのだろう。
で、何故、呪いと闘う必要があるのか、をもう一度考えてみると、それは単純に「伝わらないから」だといえる。
「愛が本当にすばらしいのは歌の中だけのことさ」*4ではないけれど、歌の世界だけにとどまるような歌詞では、いくら美しくても結局は伝わらない。
むしろ、ムードをぶち壊しにするような歌詞こそが、見過ごしてきたものを気づかせてくれる。
そう、「伝わる」ことには「気づく」という一面があると思う。
自分だけかもしれないが、スガシカオの曲は「気づき」があるから何度も聴いてしまうし、飽きない。
それは、言い方を変えれば、歌詞世界が現実と地続きであるということだ。
(以下次回に続く・・・はず)

シリーズ全体の目次

No 方程式? 言及している曲
1 ぶち壊しにする歌詞 秘密、Progress
2 関係性 イジメテミタイ、ドキドキしちゃう、はじめての気持ち
3 経験と感性と なし
4 二面性 RUSH、ひとりごと、Progress、38分15秒
番外編 サマーの方程式 なし
5 現在・過去・未来 Progress、夜空ノムコウ
6 オシム流 SWEET BABY、ドキドキしちゃう、ヒットチャートをかけぬけろ
7 スガシカオの「もしも」 8月のセレナーデ、タイムマシーン、Rush
8 単調な生活と自由 13階のエレベーター、アメリカのロックスター
9 届くメッセージソングと届かないメッセージソング コノユビトマレ、午後のパレード、Progress
10 バナナの国の戦争と平和 バナナの国の戦争、楽園、潔癖

*1:相田みつを調

*2:アゴタ・クリストフ悪童日記』が入っていたのが印象的。スガシカオのイメージどおりかもしれない。十数年ぶりに読み返したい。

*3:タイトルの「クローバー」もあり、羽海野がシカオファンということは知っていたが、主要登場人物の真山巧がシカオをイメージしていたとは知らなかった。

*4:オリジナル・ラヴ「欲しいのは君」:マーヴィン・ゲイのカバー、友部正人