Yondaful Days!

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『東京 飛行』を語る(番外編)〜bridgeインタビュー

bridge (ブリッジ) 2007年 02月号 [雑誌]

bridge (ブリッジ) 2007年 02月号 [雑誌]

さて、本日は待ちに待ったbridgeの発売日。
渋谷陽一責任編集の雑誌という意味よりも、『キングスロード』時の、鈴木あかね*1のインタビュー*2が非常にツボに入っていた自分としては、むしろ、彼女の新作に対する感想の方が気になっていた。
今回もインタビュアーは鈴木あかね。
読んでみると、冒頭でオリジナル・ラヴのこれまでを振り返りながら『東京 飛行』を絶賛。

これまで田島貴男はユニット名、オリジナル・ラヴそのままに、“オリジナル”で独特の音楽的嗅覚と器用さを武器に、テクノから江戸情緒風味までアルバムごとに照準を変えてきた。そのクオリティの高さは語るまでもない。だが、実は、ファンが待ち望んでいたのは、この田島貴男ならではのロック・グルーヴだったのではないか。

・・・ということで、今回は、前回と比べると、かなり田島貴男マンセーで話は進む。
が、終盤の畳み掛けがやはり素晴らしい。以下、鈴木あかね氏の発言を抜粋。

  • たとえば今のチャートでのご自分の位置づけはどう考えてらっしゃるんですか?
  • この「ZIGZAG」っていう曲は、ご自分の心境なのかな、と思ったんですね。《もしもチャンスがもう一回巡ってきたときの日のために/しっかり起き上がって立って》っていうフレーズ、ここでのチャンスって何を意味しているんですか。
  • 前作ではヨナ抜きとか和風の音作りに傾倒してましたよね。あの時期はファンの間で賛否両論あったんじゃないかと思うんですけど、どうですか?

そして、ラスト付近のまとめは、『東京 飛行』の何が素晴らしいのかを、非常にうまく表現していると感じた。

ちょっと前までは、アルバムを作る前に、方向性はこれで、言葉は夏目漱石を読んでメモっておいて、とか、創作のためにいろんな練習をして、その練習の成果をそのまま形にしていたと思うんです。
今回の『東京 飛行』が違うのはエレクトロニックもエスニックもやりました、美空ひばりにハマって歌唱に気を遣ってみました、そういう回り道の経験がきちんと体内を通過して出ているんですよね。

ここの「体内を通過して」というところ、試験に出るので赤線を引いてください。
結局、渋谷陽一がいわんとしていたところは、ここなのではないか?
一応、渋谷陽一田島貴男のやりとりを再度引用。

渋谷「これを『最高だなあ』と思って、みんな聴いていて。ようやく田島くんもわかったんだと思うと、また次のアルバムで、全然とっ散らかる危険性があるんですよ。あなたの場合は」
田島さん「うーん」
渋谷「だからこの『東京 飛行』が何故いいのかっていうのを、作った本人に説明するのもバカバカしいけれども(笑)」
田島さん「あははははは!」
渋谷「それをちゃんとねえ、理解しないとだめだよ。そんな違ったもの作ったと思ってないでしょ? 『街男 街女』と」

つまり、「江戸情緒風味」や、昨日書いたような(通常の日本人が感じるような)「生活感」は、田島貴男の体内を通過していないものなのだ。だから外国人が見たニッポンになってしまう。
そこをあまり意識せずに、田島貴男がこれまで蓄積して日が経って肉体と化したものをそのまま出すのが、オリジナル・ラヴの音楽として、一番、皆の理解を得られるのだと思う。
田島貴男は、外で見つけた珍しいものを銜えて見せに来る「猫」と一緒で、自分が面白いと思ったものを、かなり早いタイミングで音楽に取り入れる癖がありすぎる。勿論、それはオリジナル・ラヴの長所ではあるものの、結果として、ポピュラリティを得にくい作品が出来てしまうことが多い。ファンの裾野を広げられないのである。
でも、今回は大丈夫。十分、ファンの裾野を広げることができる作品に仕上がった。
だからこそ、自分はひとつ提案をしたい。
仙台でもライヴをやってほしい。
(笑)
(でも本気)

*1:著作『現代ロックの基礎知識』は内容が気になるところ。

*2:ちょうど一年前のエントリーだ!http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20051227/OL