- 作者: 乙一
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/05/19
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6編のうち、はじめの2編に、1巻に満ちていた緊張感が欠けていたので不安になったが、読み終えてみれば満足できる本だった。
ごく一般的なことだと思うが、小説を読むときは、「絵」を頭で補っている。普段は意識しないことだが、漫画と連続して読むと、登場人物が、頭の中の「絵」として主張してくるのでよくわかる。
『ZOO(1)』では、直前に読んでいたのが、水樹和佳子『イティハーサ』の絵だったが、これは「カザリとヨーコ」「SEVEN ROOMS」のイメージには合っていて、物語を上手く盛り上げた。
それが、『ZOO(2)』では、直前に読んだのが諸星大二郎で、その絵が悪い方向に作用した。冒頭に書いたように、はじめの2編に面食らったのは、そのせいもある。
1巻は、全話に渡って緊迫感に満ちており、ホラーの要素が強かったが、『ZOO(2)』のはじめの2話は一転して、スラップスティックと、ファンタジー要素の強い悪趣味童話。それこそ読んだばかりの『スノウホワイト グリムのような物語』で見た諸星大二郎の世界がそのまま描かれているにもかかわらず、「本家」と比べると見劣りする。食べ合わせが悪かった、と言ってもいい。とにかく連続して読むにはかなり悪い組み合わせだった。
そんな悪い印象で、この本を読み始めたのだったのだが、読み進めば、悪印象もどこへやら、むしろ作風が豊かだからこそ、あの2作なのだと理解した。
特に、巻末の解説で、島本理生が絶賛しているように、僅か4頁でウルトラCを決める「むかし夕日の公園で」が素晴らしい。(これもまた、諸星大二郎「僕とフリオと校庭で」を思い出させるタイトル))
そのほか、印象に残ったのは「神の言葉」。
設定が、やや『デスノート』と似ている気がするが、生物を服従させる能力(声)を持つ主人公の苦悩の話。途中から怒濤の展開だが、主人公の悩み自体にはシンクロ率が高かった。
しかし僕は違っている。父から気に入られたいばかりに勉強して身だしなみも質素で健全に整えているのだ。その姿はある人に言わせればさわやかで明るい好青年だという。しかしそれは単なる上っ面であり金色をした毛皮の中身はどろりとした赤黒い塊なのである。
好きなパターンのひとつではあるな。
〜〜〜
『ZOO(1)』も含めて全体を振り返ると、やはり、印象深いのは「SEVEN ROOMS」。島本理生もこれを挙げているし、amazon評も、この短編への思い入れがある人が多いようだ。
しかし、その分、映画版の『ZOO』では、上手くいっていないようだ。ある程度、既に映像的な作品であるからこそ、映画版を見るのは(イメージを壊すのが怖いので)ためらわれるが、市川由衣や神木隆之介の好演だけを期待してみるのもいいのかも。
なお、コミック版はamazonでの酷評を受けて、全く読む気なし。
- 映画版は・・・
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それにしても、タイトル『ZOO』、読み仮名(ズー)、「乙一」の字形の並びが素晴らしい。もともと、タイトルは、ピーター・グリーナウェイの映画からとっているようだが、当初から少しは意識していたのか?