Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

日垣隆『すぐに稼げる文章術』

すぐに稼げる文章術 (幻冬舎新書)

すぐに稼げる文章術 (幻冬舎新書)

目次は以下のとおり。

第1章 「どう書くか」より「どう読まれるか」
第2章 「初級編」こんな悪文を反面教師に
第3章 「中級編」実務文はこう書けば生まれ変わる
第4章 「上級編」ネットで生き残る智恵
第5章 発想の訓練法
第6章 こうすれば稼げるQ&A
第7章 文章で稼ぐための必読33冊

以前も少し触れたのだが、日垣隆の著作としては、低評価とされても仕方が無いと思う。

ダメな部分

ダメな点として、誰もが指摘したくなるのは、羊頭狗肉で下品なタイトル。何を持って「すぐに稼げる」と言っているのかよくわからない。より実用度が高いと考えられる(言い方を変えると、ライター向けで一般向けではない)第6章を中心にして内容を深めれば、タイトルが志向するような本になると思うが、そうはなっていない。
タイトルについては、本人も違和感があるようで、あとがきで「考えたのは自分ではなく、編集者」と言い訳をしているのもいただけない。変なタイトルにして損をするのは幻冬社以上に、日垣隆自身なのだから、もう少し考えてもよかったのでは?*1

次に、全体のバランスがあまりよくない。
いわゆる「文章読本」として書かれた部分は、いつも通り冴えているところも多いだけに、特に「稼げる」に意識して書かれた4章、5章後半、6章が浮き上がってしまっているように見える。ちなみに、「ブログ炎上」などについて取り上げた第4章は全くもって不要で、内容的にも期待以下だと思う。本来ならば、メインとしてもいいはずの【上級編】として、この文章がくるのは理解できない。
なお、ここら辺りの構成の凸凹感についても、あとがきで言い訳しているのもいただけない。(笑)

よい部分

一方で、第1章の「読ませるための7つのポイント」「これだけは気をつけたい基本の基」などの文章の基本部分はうまくポイントをついていると思うし、これなら「使える」感じがする。
このうち、(2)“「です」「ます」調は大リーグ養成ギプス”⇒語尾に変化の生まれにくい「です」「ます」調で書くことによって、確実に文章のレベルアップが図れる、という意見には非常に納得。自分は、まさにその理由のために、基本的に「です」「ます」調は避けている。一考の余地があるかも。
なお(4)の誤字については、自分は読み返すときに、はてなのキーワードに拾ってもらえているかどうか、で判断しており、はてなダイアリーを使うメリットの一つだと思う。(例えば「斉藤孝」ではダメだが、「斎藤孝」では自動リンクが形成される。)
また、書籍紹介の第7章は非常によかった。取り上げられている33冊はバラエティに富み、読みやすいものを中心に挙げられている。中谷彰宏が含まれている部分などは、わざとなのかもしれないが、「読者」としての日垣隆の幅の広さを感じさせ、どれも読もうという気にさせる。

まとめ

『知的ストレッチ入門』の印象がよかっただけに残念だった本。この手の本で自分が好きな樋口祐一『ホンモノの文章力』、山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』なんかと比べると、格は落ちると言わざるを得ない。おそらく、今後も書かれるだろう類書に期待したい。

*1:『知的ストレッチ入門』はタイトルだけでもいいが、内容はタイトル負けしておらず、非常にマッチしていた。ガッキィファイターで開催された「すぐに役立つ文章講座」をベースにタイトルをつければ、これほどの「羊頭狗肉」感はなかったと思う。