Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

集団失踪と食料価格と労務管理

毎日毎日同じものを食べさせられた上のルーチンワーク。やっと仕事を覚えたと思ったその頃に、次の職場へ異動する繰り返し。効率化ばかりが前面に押し出され、働く側のことは全く顧みられない。そんな劣悪な労働環境に耐えきれなくなった労働者たちが、ついに集団失踪・・・。そんな事件が、今、アメリカ各地で頻発しているという。
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テレビなどでも話題になっている通り、これは実際に起きている事件。といっても、ヒトではなくミツバチの話だが・・・。

いま、アメリカ全土で、養蜂家の所有するミツバチが大量に姿を消し、農業大国に衝撃が広がっている。アメリカでは農作物の3分の1をミツバチの受粉に頼っているだけに、食糧高騰に拍車をかけかねないと危機感が高まっている。科学者たちはこの異変を「蜂群崩壊症候群(CCD)」と命名。米農務省は緊急に研究チームを立ち上げて原因究明に乗り出した。

少し前のクローズアップ現代
原因のひとつとして番組で挙げられていたのは、冒頭に書いたように、過酷な労働環境からくるストレスや農薬だが、現時点では、原因究明には至っていない。
このようなミツバチの大量失踪に対して、取られている対策が3つ紹介されていたのだが、そのうち2つは「ええええ〜?」と思うものだった。

  1. 少ないミツバチを、より効率的に働かせるため、幼虫のフェロモンを利用してやる気を起こさせる。(ただし、寿命は短くなる)
  2. ストレスや病気に負けない、強いアフリカ種のミツバチを用いる。もしくは、かけ合わせて強い種をつくる。(ただし、アフリカ種のミツバチは攻撃性が高く、被害を受ける人間が増加する可能性がある。)

全体として、視聴者が、ミツバチをヒトに置き換えて見てしまうような番組内容であったため、これらを聞いたときは、かなりショックを受けた。最近、「人間までカンバン方式」などという話を聞いたあとだったのでなおさらだ。
番組最後には、腑に落ちる解決策が出て少し安心したのだが、二つのインパクトが強すぎた。

 3.ミツバチのストレスを下げるため、収穫対象の農作物以外の植物(ミツバチにとっては、食べもの)を入れたり、野生種の昆虫の力も借りたりする。(うろ覚え)
どれだけうまくいくのかは別として、ワークシェア的な考え方で、見ている方もモヤモヤが取れた。
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ところで、養蜂業といえば、自分としては、鉄腕DASHで以前に見たイメージが強く、ハチミツづくりがメインなのかと思っていたが、番組を見ると、米国では、授粉作業に使うことが多いという。

授粉のためのハチの貸し出しは、米国農業にとって必要不可欠な要素である。自然の受粉のみで現在のレベルの生産を行うことが非常に困難だからである。米国の養蜂家は、蜂蜜の生産収入より、授粉のためにミツバチを貸し出す収入の方がはるかに多い。

「それでは、日本は?」と調べると、最近になってから増え始めてきたようだ。

農産物の授粉にミツバチを導入する産地が相次いでいる。もとは果物が中心だったが、最近では野菜やソバにも拡大。高齢化が進む農家にとっては手作業の負担がなくなり、農薬を減らす必要があるため「安全・安心」もアピールできる。

記事によれば「かつては一花ごとに手作業でホルモン剤を吹き付けていた」ということ(疎くて恥ずかしいのですが・・・)なので、米国のような大規模農園では、ミツバチの力を借りなくては不可能なのだろう。「アメリカでは農作物の3分の1をミツバチの受粉に頼っている」というのも頷ける。*1
これからの農業は、負担減と効率化を追求しながらも、ミツバチに「スト」を起こされないよう、労務管理をしっかりとしなければならないのですね。それが、国内の食料価格にそのまま影響するのだからなおさらです。
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余談だが、こんなところにも、国内農業の弱さがあるようだ。

施設園芸で使う授粉用のミツバチが不足している。原因は、オーストラリアから輸入がストップしたことにある。国産農産物への関心が高まっているが、農産物の生産に必要な資材も、意外なところで輸入に頼っていることが浮き彫りになった。本気で食の自立を目指すなら、生産資材の自給率向上を考えなければならない。国産ミツバチ利用への転換を意識した生産構造の見直しが求められる。

国内でできる部分は、海外の力を借りずにうまくやってほしいなあ。

*1:家畜飼料にもミツバチの授粉を使っているものがあるようで、牛肉価格にも影響が出るという。