1年半ぶりに更新の「スガシカオの方程式」。何回か、新譜『FUNKAHOLiC』の絶賛レビューというかたちで続く予定。
このシリーズのスタンスは「何故、スガシカオが売れるか」ではなく「何故、自分はスガシカオの曲(歌詞)が好きか」を掘り下げるもので、普遍的なものを追求しているわけではありません。
・・・などと言い訳しておきますが、共感するところのあった人には勿論コメントをいただきたいし、異論反論ある方は、どんどんご指導ご鞭撻いただけると幸いです。よろしくお願いします。というかコメントください。
- アーティスト: スガシカオ
- 出版社/メーカー: BMG JAPAN Inc.(BMG)(M)
- 発売日: 2008/09/10
- メディア: CD
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エレベーターという名の日常
『FUNKAHOLiC』ですぐに気に行ったのが「13階のエレベーター」。
ぼくの家は13階 人気がなくて
家賃が安い エレベーターで30秒
ずっとひきっぱなしのマット 何か染みついている
30秒息を止めたら そこは13階
このエレベーターで 死ぬまで行ったり来たり
という出だしの歌詞は、内容と合わせてか、わざと同じことを二度いうような「行ったり来たり」*1。こういう技巧的な部分は、やっぱりスガシカオすごいなあと思う。
さて、サビの「この息苦しいエレベーターから出してくれよ」「この息苦しい毎日なんとかしてほしいんだ」までくると、エレベーターは、凡庸な日常生活の象徴だとわかる。
先日読んだ吉田修一『日曜日たち』収録の「日曜日のエレベーター」でも、変りない日常風景を現すものとしてエレベーターが使われていたが、エレベーターというものから漂う不安感は、多分、その「便利さ」ゆえなのだろうと思う。いわゆる文明の利器に囲まれて暮らしている現代人は、「便利さ」ゆえの「単調」、自分がベルトコンベアーに乗せられているような、ブロイラーに入れられているような、楽ちんだけど変化に乏しい生活に飽き飽きしている。
自由って何
このテーマは、先行シングルのカップリング「アメリカのロックスター」と完全に重なっていて、「アメリカの〜」では以下のように歌われている。
カラオケで歌うLOVE SONGっぽい 急展開もない週末
起承転結でいえば いつまで“承”ばっかりつづく??
この二つの曲には、「自由って何」というテーマも共通しており、何となく「豊か」な感じに飽和してしまった現代日本社会の病理をうまく表していると思う。*2実際、自由って何かという疑問は、結構難しい部分を含んでいる。
13階のエレベーターでは「自由+Through=狂う」という歌詞もあるが、放っておいてほしいけど構ってほしい(Throughしないでほしい)なんて、何て贅沢な悩みなんだろう!でもその通りなんだよな。
シリーズ全体の目次
こちらを参照のこと。