Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

フィールドワークの参考書として〜福田恵一『玉川上水 武蔵野 ふしぎ散歩』

図が豊富で分かりやすく、読んで良かった。
深大寺と野川について触れている部分もあるが、メインは玉川上水の話。河川と用水路の違いについて書かれた以下の部分に、玉川上水を読み解く重要な鍵がある。

そのころから、私は田んぼや水が流れる水路を見ると、それが自然の川なのか、用水なのか?また、用水ならば、水源はどこなのか?と考えるようになりました。
(略)
見分け方はそんなに難しくありません。

いわく

  • 自然な状態では、水は低いところへしか流れないので坂の一番下(谷)に流れる水路は自然の川。
  • 用水路は、なるべく(遠くまで届かせるため)高いところに水を流そうとするので、坂の途中や坂の上に水路があれば用水路。
  • ただし、谷沿いに落としこんで田んぼに利用するタイプの用水路もあり。


玉川上水は、多摩川の水を羽村から江戸城まで運ぼうとした水路だから、なるべく高いところを通そうとする。だからこそ、三章で説明しているような「上水が崖を登る」というような不思議な状況が発生するのだ。
多摩川から河岸段丘の上部にある武蔵野台地の上のルートに至るまで、下流に向かう地形勾配よりも緩やかに用水路が作られているから、それが可能になる(下図p48、p84)


深大寺周辺の地形も国分寺崖線、府中崖線を入れてみると、非常に面白い。(下図p67)
これを見ると深大寺やその門前町が、野川の支流、逆川の谷にあり、神代植物公園側に登る坂道が、まさに国分寺崖線であることが分かる(よく行く場所なので感覚的にも分かる)。この逆側と野川に挟まれた舌城台地の上にあるのが深大寺城跡で、ここは行ったことが無かったので、今度、その地形的な視点を持って訪れてみたい。


また、甲州街道をめぐる基本知識も面白かった。(p96、64)

  • 甲州街道は家康が整備した五街道のひとつで、江戸と甲府、下諏訪を結ぶ街道
  • 半蔵門から進む再の最初の宿駅は、高井戸だったが、距離が長いため、途中に作られた新しい宿駅が「新宿」
  • 宿駅業務(伝馬など)は一ヶ月。下高井戸、上高井戸は半月交代で行う合宿(あいのしゅく)。
  • 布田五宿は、国領、下布田、上布田、下石原、紙石原で6日ずつ行う変わった宿。


地形的観点から野川を見るのは、長野まゆみ『野川』の影響もあるが、細かいフィールドの見方を教えてくれる、このような本の存在は嬉しい。こういう面白くて分かりやすい本は、他にもあるのかもしれないので、もっと探していこう。


ところで、先日ブラタモリ国分寺特集で、野川源流が取り上げられていたが、源流のある日立製作所中央研究所では、春と秋に一般公開をしているという。調べてみると、4月1日とのことなので、これは絶対に行きます!

【2012年の庭園開放予定日】
春:2012年4月1日(日) 10:00-14:30
秋:2012年11月 (詳細未定)
※ いずれも、雨天の場合は中止させて頂きます。