Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

宇宙の鏡作戦再び

温暖化関連の問題は、資料が多すぎて勉強しきれません。
素人考えの、放言レベルのエントリということでお願いします。

地球温暖化を抑制するためのもっとも効果的手段とは?

地球温暖化対策としてはこれまで温室効果ガスの排出量を削減ばかりが議論に上ってきたが、ここにきてこれまで地球温暖化対策に消極的な姿勢を示してきた米国政府が、地球を直接冷やすことで地球温暖化を抑制するという、大胆な方策を真剣に検討していることが8日までに明らかとなった。

オバマ大統領の科学技術顧問となるジョン・ホールドレン(John Holdren)博士がAP通信のインタビューに応じて明らかにしたもので博士は、「地球温暖化を抑制するためのもっとも効果的手段は、地球工学(Geoengineering)などの手段を用いることにより地球環境そのものを改造することが最良の方策」とのアイディアをオバマ大統領に対して進言した模様だ。

地球工学による地球冷却策としては、オゾン層の研究で1995年にノーベル化学賞を受賞したポール・クルッツェン(Paul Crutzen)博士が提唱した、地球の大気圏の上層部に硫黄を大量散布する方法などが挙げられるが、この方法は同時に大規模な地球環境の破壊につながるといった弊害も指摘されてきた。

ホールドレン博士は「こうした方法は最後の手段ではあるが、北極圏の氷の融解が予想以上のペースで進行するなど、地球温暖化のプロセスはある一定の閾値を超えた場合は、温室効果ガス排出量の抑制といった消極的策では止めることはでき状態に陥ることも十分に予測される事態となってきている。そうした状況に陥った場合に備えて地球工学による地球温暖化対策を真剣に検討すべき時にきている」との考えを明らかにした。

ちなみに、「地球の大気圏の上層部に硫黄を大量散布する方法など」の「など」は、以前話題になった「宇宙の鏡作戦」のことだと思う。

宇宙空間に浮かべた鏡で太陽光線を反射するという温暖化対策の研究を今春に出される国連の報告書に盛り込むよう、米政府が提案する。英紙ガーディアンが伝えたもので、試算では太陽光線の1%も反射すれば産業革命以来出してきた温室効果ガスの効果を十分相殺するという。排出削減を柱にした京都議定書とは反対の、いかにも米国らしい“プラス志向”?。

国連は今年、人為的な気候変動リスクに関する知見をまとめた3つのセクションからなる報告書を出す。各国政府関係者や科学者らが参加する「気候変動に関する政府間パネル」が作業に当たり、草稿が各国政府に回覧される。米国は今年4月に予定されている第2セクションの報告書の、最も目立つ要約にこれらの研究開発について盛り込むよう働きかけるという。

米国は2001年に京都議定書の枠組みから離脱し、強制的な温室効果ガスの削減には反対の立場をとってきた。その一方で石油代替エネルギーとしてバイオ・エタノールを推進するなど、新たなビジネスに結びつく対策には熱心だ。

SF映画ばりの“宇宙の鏡作戦”も、宇宙産業には大きなチャンスといえる。もっとも、報告書の草稿はこうしたアイデアをあげ、費用も他への影響もわからない理論的なものと指摘しているという。
産経新聞2007.1.29)

なお、「地球の大気圏の上層部に硫黄を大量散布する方法」はこちら。

アイオワ州立大学のカーチス・ストラック教授によるこの論文は、月面に存在する微細な砂を月の軌道上に散布することで、太陽からの直射日光の照射を反射させてしまおうという考え方となる。ストラック教授によるとこの方法で月間約20時間分の太陽光照射を抑制する効果を持たせることが可能としている。

 太陽の光は1日24時間、月間720時間に渡って地球を照らし続けており、その内、たった20時間分を減らしたところで趨勢には影響は与えないようにも思えるが、地球に照射される太陽光のうち1%も削減できれば、産業革命以来、現在に至るまでの地球温暖化の影響を全て相殺させることができるという試算も公表されている。

考えたこと

温暖化対策について、間接的な方法である二酸化炭素排出量削減に過度にこだわるのは(CO2増大→温暖化という機構自体に反論する科学者も一定程度存在する*1ことから)バカバカしいと思うので、太陽光自体に直接働きかける方法は、それなりに意味があると思う。
むしろ、費用対効果が机上の議論になってしまうCO2論議を続けていくのが、そろそろ嫌になってきたということなのかもしれない。
ただ、これまでに無かった人為的な負荷が、地球環境的な問題を招いているという部分が、温暖化問題の本質であると考えれば、こういった対策は、時代に逆行していると誰もが思うだろう。この対策が、さらに別の問題を生む可能性があるだけでなく、生じた問題に対しても、その機構が嘘だ陰謀だと不毛な議論を加えていかなくてはならないだろうことを思うと、「あり」か「なし」かで言われれば、全然「なし」の話だろう。

発言の意図は?

とすれば、何故、この発言が出てくるのか?
一つ考えたのは、極端な例を出すことで、地球温暖化対策全体の無意味性を主張したかったのではないかということ。
つまり、ホールドレン博士いうところの「地球環境そのものの改造*2」までは行かないとしても、温暖化対策の多くが、対策のために新たに人為的な負荷を重ねることになる。とすれば、そういった対策も、地球改造と同様、一笑に付されていいのではないか。
実際、新たな人為的な負荷が加わるものでなければ、グリーン・ニューディールと呼ばれるような経済対策になりにくい。日本で追加経済対策として出ている、エコ家電やエコカーへの買い替えも、廃棄物の大量増という厄介な問題がある。
そもそも、経済発展と環境問題は相性が悪いことは目に見えているので、幸せな結婚は長くは続かないだろう。
個人的には結論が出ない部分であるが、人によっては、家族がぎりぎりまで幸せに暮らしていければ、地球が終わっても構わないと思う*3かもしれないし、地球を終わらせないために、江戸時代の生活に戻そうという考えもあるだろう。ただ、終わるタイミングにかなりの地域差が出ることを考えると、地球環境より先に政治的な紛争が活発になりそうな気もする。
ギリギリまで粘るべき問題ではあるが、「宇宙の鏡作戦」を真剣に考えようなんて意見が出てくる世界になるとは思わなかった。

*1:正直言って、何が正しいのか判断できない

*2:自然環境の「改造」という言葉自体、日本人にとって受け入れられないと思うが、いわゆる西洋的な自然観では「あり」なのだろうか

*3:自分は『崖の上のポニョ』を、このように解釈しています。