Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

ますむらひろし『イーハトーブ乱入記』

メインとなる、銀河鉄道の謎解きの部分は、決して読みやすいとは言えないが、作者の、宮沢賢治への思いと、『銀河鉄道の夜』という物語の深さがよくわかる本。
これを読むと、あの映画(ますむらひろしの漫画が原作ということになる)も、生半可な気持ちでつくられたものでないことがわかる。また、「銀河」の「星」の中にいるはずなのに、画面全体が常に暗い理由も納得でき、改めて、映画を見てみたくなった。
ここら辺は行きつ戻りつで、解説本を読んだあと、作品に戻り、改めて解説本を読む、ということを繰り返して理解が深まるのかもしれない。そして、『銀河鉄道の夜』は、そういった繰り返しの価値がある作品だ。

ますむらひろし『グスコーブドリの伝記/猫の事務所・どんぐりと山猫』

収録されている3作品中、「どんぐりと山猫」だけ読んだことがあった。ようたと一緒に書店に行った際に、絵本で読んだのかもしれない。そして、これが、一番、筋がわかりやすい童話。
それに対して「グスコーブドリの伝記」は、童話形式ではあるものの、環境問題と農業についてとりあげた、「社会派」的な作品。ラストシーンは、「銀河鉄道の夜」の“さそりの火”の話を思い出す。
「猫の事務所」は、いじめられ猫・かま猫の話。上に挙げた『イーハトーブ乱入記』でも、ますむらひろしは、特別に感情移入するキャラクターとして、かま猫を挙げている。しかし、特にラストが顕著だが、つかみ所がない話なので、感想を述べるのは難しい。
3作品の中では、「どんぐりと山猫」だけが「人間」の登場する漫画。それ以外は、猫がメインの登場人物であるが、違和感は全く無い。ラストまで含めて、よくできた童話。単純に面白いと思えた。

宮沢賢治『風の又三郎』

以前取り上げた『銀河鉄道の夜』と同様、CDの朗読シリーズ。朗読は市原悦子
http://www.shinchosha.co.jp/book/830007/
賢治作品としては、『銀河鉄道の夜』しか知らないときに、これを聞いたので、軽い内容には、やや拍子抜けした。
始まり方、終わり方も、「転校生もの」として現代にも受け継がれている、よくあるパターンだったし、ストーリー展開という意味では、緊張感を強いられる部分は、ほとんどなく、気軽に内容を追える。
しかし、自然風景や、三郎たちの物事に対する感じ方など、ストーリーではない部分に、大きな魅力を持った作品だと思った。そして、それを、方言交じりで感情丸出しの子どもたちの会話を演ずる市原悦子の朗読が支えている。
これもまた、活字で読んだ場合には、よくわからずに通り過ぎてしまった本かもしれない。
自分みたいなせっかちには、朗読CDはとても「使える」メディアである。

『セロ弾きのゴーシュ』(監督: 高畑勲)

セロ弾きのゴーシュ [DVD]

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コレだけ見ると、映画のためにつくられたような作品。というのは、終始、音楽が流れる作品なので、むしろ本として作品を成立させる方が難しいと思えるからだ。
しかし、どうも原作に忠実のようなので少し驚く。
雰囲気的には『ファンタジア』にも似るが、ああいった難解さは無く、それほど退屈にもならずに全編を見通すことができた。
イーハトーブ乱入記』によれば、「宮沢賢治は猫嫌い説」*1のひとつの証拠として、この話の中の「猫虐待」シーンも取り上げられるというが、自分で見ていてもちょっと痛そうだ。

*1:ゆえに、アニメ映画『銀河鉄道の夜』のキャラクターを猫で表現するのはおかしい、と説く賢治研究家が何人かいたという。