Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

大槻ケンヂ『グミ・チョコレート・パイン チョコ編』

グミ・チョコレート・パイン チョコ編 (角川文庫)

グミ・チョコレート・パイン チョコ編 (角川文庫)

物語後半で、賢三、山之上、カワボン、タクオのバンドがついに練習を始動。バンド名は「キャプテン・マンテル・ノーリターン」。1947年にUFO追跡中に消息を絶ったアメリカのマンテル大尉に由来する、という、全く持ってオーケンらしい命名
しかし、カワボンのギター、タクオの打ち込みサウンド、山之上の歌詞と比べて、主人公・賢三には何も無い。(本当は、書いた詩もあったのだが、山之上の才能を見て、発表を避けた、つまり逃げ出した。)
一方で、ヒロイン美甘子は、共演するジャニーズアイドルと恋に落ちようとしていた。
初めての恋愛に心弾む美甘子のワクワク感と、自己嫌悪スパイラルに陥る賢三のダメダメ感が交錯する中、三部作の二作目は終わる。

この巻では、実在の人物をモチーフにした音楽仲間との出会いがあり、高校の、それこそバンドメンバー4人の中でしか共有できなかった気持ちが、外に外に広がっていく。
次の巻に持ち越しとなったが、賢三たちのライヴデビューのきっかけをつくったのは、ケロ。
ケロ率いる有狂天のライヴには、筋肉少年少女隊というバンドすら登場するが、これらは、それぞれ、ケラ(ケラリーノ・サンドロヴィッチ)、有頂天、筋肉少女帯を指すのだろう。
作者の分身である賢三がいるにもかかわらず、これも作者の過去の姿である、筋肉少年少女隊が登場し、さらに、賢三に対して、頻繁に作者が突っ込みを入れる、という、とにかく自意識過剰な構造は、他では得られない、この物語の大きな特徴である。
そういった自意識過剰が、素人くさいながらも、煩わしすぎないところでバランスを保っているのが、オーケンの上手さなんだろう。*1
〜〜〜
そういえば、この本にも「ひとり遊び」談義*2がある。というか、そればかり、という話もある。
いやあー、自分は、そういう話題に花を咲かせたことは、ほとんどなかったけどなあ・・・修学旅行の夜程度でしょうか。もしかして、自分の方が少数派?

*1:とはいえ、耐えられない読者も多数いると思うが

*2:「ひとり遊び」談義については、先日のエントリ参照 ⇒http://d.hatena.ne.jp/rararapocari/20070614