Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

「実在化」した魯山人

先日の日記で、魯山人の茶漬けの話題を取り上げたところ、skyさんからコメントをいただいた。
驚いたのは、魯山人が実在の人物であること。(半ばネタなのだが、半ば本気。)
自分にとっての魯山人は、海原雄山、唐山陶人*1と同等の人物、というイメージがあったので、ほとんど漫画のキャラクターと同格で、その著書に触れようという発想も全くなかった。先日、その著書が日経新聞記事で取り上げられたのを読んだときも、そしてそれをブログで取り上げたときも“民明書房刊”*2と書いてあるような気分で素通りしていた。
しかし、魯山人の本を読んだことあるよ、という人がいるのを聞いて、初めて魯山人は「実在化」した。ちょっと新鮮な体験だった。
ところで、「車エビ」ってどんなだっけ?甘エビとかブラックタイガーとかレミエビとか、カッパエビ(せん)は知っているけど、車エビって何?とちょっと不安になる。
こんなんだっけ?

・・・・・・
・・・嘘です。
その後、画像検索をして、結婚式の料理とかに出てくるやつだと思い出し安心。食べたことは、ある。つまり、自分の中で、ちゃんと「実在」していた。
最近読んだ『電波大戦』(本田透の対談集)の中で、滝本竜彦はこんなことを言う。

僕は最近まで恋愛の存在を疑っていましたよ。部屋にひきこもってネットばっかりやっていると、本当に疑わしく思えてくるんですよ。エロ無修正動画も「僕を騙すためのCGじゃないか」と・・・・・・。(略)
ずっと篭ってネットばっかりやっていると、恋愛なんてどこかの部族の変な宗教儀式なんじゃないかと思えてくるんです。

これは極端な例だが、どこかで「経験」と繋がっていないと実在が不安になってくることはある。一昔前は、知りうる情報のほとんどが自らの経験と関わりのあるものだったのだろうが、今では、その種の情報はほんの僅かだとすらいえる。
だから、何かのきっかけがあるまで、自分にとって、魯山人は架空の人物であり続け、海外未経験者にとって、水平線の向こうは崖になっていて、怪物達が口を開いて待ち続ける。バブル時代の贅沢三昧な日々は、永遠に「実在化」しない。
北極の氷がなくなってしまう・・・なんてことも、フィクションだったらいいんだけどなあ。
 

*1:いわずと知れた『美味しんぼ』の登場人物。魯山人茶漬けのエピソードも91巻で登場している、とのこと。せっかくだから読んでみたい。http://www.amazon.co.jp/gp/product/4091875815

*2:漫画『魁!男塾』に登場する嘘トリビアのネタ本を多数刊行している出版社。つまり、本も出版社も実在しない。こんな本もあるとのこと⇒http://www.amazon.co.jp/gp/product/408859469X