- 作者: 神田昌典
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2004/01/27
- メディア: 単行本
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この本は小説である。小説形式を取るビジネス本というのは珍しいものではない*2が、この本が特徴的なのは、個人の才覚よりも、組織の問題は勿論、家族の問題について非常に重きを置いていること。
事業がうまく進み、仕事が忙しくなる時期に、子どもの健康面に問題が出たり、妻に離婚を言い渡されたり、複数の社員がメニエール病で倒れたりする箇所などは、自らの経験に基づく箇所であり、切実さが伝わってくる。
そして、これらの「ダークサイド」の話が、ほとんどのビジネスの特定の成長段階で共通するパターンであることを前提に、それらに対処、あるいは防止する策を探る、というのが、この本の主旨だ。
物語は非常に上手く出来ており、また、示される対処策も説得力があった。特に、チームで機能する会社をつくるためには、経営のシステム化以前の土台として、組織のルール作り(父親的なしつけ)が必要で、さらにその土台として、構成員の信頼関係(母親的な愛)が必要だ、とされる話は、先日読んだコーチングの本*3の内容とも合致し、理解しやすかった。勿論、作中で語られるように、これらのルールは、「家族」というチームにも適用可能である。
また、繰り返し語られるように、個人としての資質向上は当然だが、それ以上に組織としての資質向上が大事だという点も、起業家ではないが、一会社人としてよくわかる話だ。リーダーシップすら個人に帰するのではなく、組織構成員の役割の問題なのだ。(P296)
後半部で、いくつか出される具体的な仕組み(クッシュ・ボールを用いたグッド&ニュー、承認の輪や誕生日の輪、またリッツ・カールトンホテルのクレドの話など)は、すぐに導入可能なものではないが、その意図は非常によくわかる。
組織の中での自分の立ち位置とできることを再確認し、組織の資質向上に向けて何かチャレンジしたあとで、再読してみたい本だ。
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