Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

神田昌典『成功者の告白』

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語

成功者の告白 5年間の起業ノウハウを3時間で学べる物語

神田昌典といえば、フォトリーディング*1の人、というイメージしかなかったが、その人間的魅力に入れ込んでいる人も多いことを知り、立て続けに二つの本を読んだ。まずひとつ目。
この本は小説である。小説形式を取るビジネス本というのは珍しいものではない*2が、この本が特徴的なのは、個人の才覚よりも、組織の問題は勿論、家族の問題について非常に重きを置いていること。
事業がうまく進み、仕事が忙しくなる時期に、子どもの健康面に問題が出たり、妻に離婚を言い渡されたり、複数の社員がメニエール病で倒れたりする箇所などは、自らの経験に基づく箇所であり、切実さが伝わってくる。
そして、これらの「ダークサイド」の話が、ほとんどのビジネスの特定の成長段階で共通するパターンであることを前提に、それらに対処、あるいは防止する策を探る、というのが、この本の主旨だ。
物語は非常に上手く出来ており、また、示される対処策も説得力があった。特に、チームで機能する会社をつくるためには、経営のシステム化以前の土台として、組織のルール作り(父親的なしつけ)が必要で、さらにその土台として、構成員の信頼関係(母親的な愛)が必要だ、とされる話は、先日読んだコーチングの本*3の内容とも合致し、理解しやすかった。勿論、作中で語られるように、これらのルールは、「家族」というチームにも適用可能である。
また、繰り返し語られるように、個人としての資質向上は当然だが、それ以上に組織としての資質向上が大事だという点も、起業家ではないが、一会社人としてよくわかる話だ。リーダーシップすら個人に帰するのではなく、組織構成員の役割の問題なのだ。(P296)
後半部で、いくつか出される具体的な仕組み(クッシュ・ボールを用いたグッド&ニュー、承認の輪や誕生日の輪、またリッツ・カールトンホテルのクレドの話など)は、すぐに導入可能なものではないが、その意図は非常によくわかる。
組織の中での自分の立ち位置とできることを再確認し、組織の資質向上に向けて何かチャレンジしたあとで、再読してみたい本だ。
(文庫本が出ている?加筆があればこちらで⇒成功者の告白 (講談社+α文庫)

*1:できませんが・・・

*2:『ザ・ゴール』など。未読。本棚にはあるのだが・・・。

*3:伊藤守『 小さなチームは組織を変える』asin:4062126354