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日経2/10記事「レアメタル、価格が高騰(24面・ニュース入門)」

最近話題のレアメタルについて、ニュース入門に取り上げられていたので、整理。
自分自身、「レアメタル」と聞いても、なんとなく「経験値稼げそう」*1くらいにしか思っていなかったのだが、少し調べてみると、またしても後手後手の日本の外交政策が見えるようで暗い気持ちに。
以下、いくつかの記事から引用したが、松浦晋也さんの書評記事が非常にわかりやすかったので(少し古いが)、興味のある方はご一読を。(以下の本についての書評)

レアメタル資源争奪戦―ハイテク日本の生命線を守れ! (B&Tブックス)

レアメタル資源争奪戦―ハイテク日本の生命線を守れ! (B&Tブックス)

レアメタルとは何か

レアメタルとは何か、については、大手町博士のサイトの図がわかりやすかった。

経済産業省は、現在、31種類の金属をレアメタルと定義している。うちクロム、リチウムなど特に安定確保が必要な17種類を「主要鉱種」として、備蓄などを行っている。貴金属のプラチナやパラジウムも、経産省の定義するレアメタルだ。なお、ネオジム、ランタンなど希土類の計17種類の元素は「レアアース」として1種類と数える。

図を見ると、非鉄金属の中にレアメタルがあり、重要なものは主要鉱種として指定されていることがわかる。レアメタルで一番メジャーなのはプラチナ、ニッケル、コバルトあたりだろうか。
その特徴としては、以下がある。

  • 自動車やハイテク産業に欠かせない(産業のビタミンと呼ばれる)
  • 産出国に偏りがある

特に、後者は極端で、例えば、中国はレアアースの93%、タングステンの90%を占めている。

価格高騰の原因

価格高騰の原因については端的にいえば以下のとおり。日経記事によれば、中国は2006年11月以降、レアメタルを含む非鉄金属の輸出関税を4度にわたって引き上げているという。

鉱物資源においてもエネルギー資源と同じ流れが生まれている。ベースメタルやレアメタルに対する需要が伸びる一方で、供給地域の偏在という特性や、供給サイドの寡占化が進み、資源価格が高騰。これを受けて資源国政府は、資源ビジネスへの介入を強めている。近年、こうした構造が顕著になってきたことが、非鉄金属をめぐる攻防を激しいものにしている。

対策

こういった問題点に対する対策としては、以下のようなものが挙げられている。

1.ニュース入門(日経記事)

2.大手町博士

「官民一体となった資源外交や、国内外での探鉱開発や代替材料の開発、リサイクル推進などにも取り組むことが必要じゃな」

3.総合資源エネルギー調査会

今年6月に出された総合資源エネルギー調査会の答申「今後のレアメタルの安定供給対策について」は、備蓄する鉱物の種類の増加を検討すると同時に、今後強化すべき対策として次の三つを提言している。

1. 海外探鉱開発の実施と資源外交
2. レアメタルの効率利用とリサイクルの推進
3. 代替材料の開発

4.中村繁夫『レアメタル資源争奪戦』

著者は最後の第4章を、まるまる今後の日本が取るべき対策に当てている。
  (1)国家による海外での探鉱の支援
  (2)国内鉱山の再開発
  (3)突発的供給不足に備えた国家備蓄の推進
  (4)レアメタルのリサイクル推進
  (5)レアメタルを使用しなくても済むような新技術の開発

1〜4すべてに共通する資源外交、リサイクル推進、代替材料の開発については常識的で意味がわかるが、国内での探鉱開発と国家備蓄について、さらに松浦晋也さんの書評記事より引用。

(2)は少し説明が必要だろう。国内には採算割れのために閉山したレアメタル鉱山が存在する。国際的な価格が高騰すれば、これらうち捨てた鉱山でも、採掘して採算が合う可能性が出てくるのだ。新たな投資を行って、十分な採算性を持つ品位の鉱床を探すことも考えられる。海外では鉱石を選別した後に残る残渣(ざんさ)の中から、以前は低品位ということでうち捨てていた鉱石を回収する試みも始まっているという。著者は経済水域内の海底鉱床の探査も行うべきだと指摘している。

 国家備蓄に関しては、なかなかお寒い現状が指摘されている。現在、日本は、約3カ月分の原油を国家備蓄しており、同時に約80日分ほどの民間備蓄を保有している。一方、レアメタルに関しては主に鉄鋼への添加用7種類が25日分備蓄されているだけで、民間備蓄も10日分ほどしかない。2006年度からは、電子部品用レアメタルの国家備蓄の検討が始まったが、まだ実際の備蓄には至っていない。

日本を担う産業において、レアメタルが重要な位置を占め、さらに、その価格が中国の胸先三寸で決まってしまう可能性があるという構図は、まさに痛し痒し。しかも、資源外交という点において、中国は日本の二歩三歩先を行っているという状況。
もう、月か深海みたいなところ行くしかないか?

なお、この日のほかの記事では「詩歌のこだま」で紹介されていた新書『江戸俳画紀行』に興味あり。

江戸俳画紀行―蕪村の花見、一茶の正月 (中公新書)

江戸俳画紀行―蕪村の花見、一茶の正月 (中公新書)

*1:はぐれメタルっぽい。