Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

パン販売禁止だと騒ぐ前に・・・

千葉県船橋市宮本の市立峰台小学校(末永啓二校長)で6年生の男児(12)が給食のパンをのどに詰まらせ、窒息死していたことが21日、分かった。

同小などによると、男児は給食の時間の17日午後0時45分ごろ、直径約10センチの丸いパンを食べてのどに詰まらせた。ちぎって一口を食べた後、残りを2つに割って一度に口に入れたという。
(小6男児、給食のパンを喉に詰まらせ窒息死(産経新聞) - Yahoo!ニュース)

一部では、直前のこんにゃくゼリー販売中止措置に重ねて「パンも禁止か」と騒がれている記事だが、自分にはショックだった。
こんにゃくゼリーは、自分があまり食べない/子どもにも食べさせないこともあり、あまり気にしていなかったが、パンは違う。1歳になったばかりの夏ちゃんもよく食べている。

オールアバウトの記事からの孫引きだが、平成19年度 厚生労働科学特別研究事業「食品による窒息の現状把握と原因分析」調査によれば、窒息事故例の主な原因食品は、(1)もち(2)ご飯(3)パン(4)粥(5)だんごとのことで、結局のところ、何を食べていても注意しなければならない、ということのようだ。

乳幼児にものを食べさせるときの注意

さて、内閣府食品安全委員会「食べ物による窒息事故を防ぐために」によると、特に、以下の点に注意が必要。

  • 誤って気管支に入りやすいピーナッツなどの豆類は3歳になるまでは食べさせない。急停車する可能性のある車や揺れる飛行機の中では食べさせない。
  • あおむけに寝た状態や、歩きながら、遊びながら、ものを食べさせない。
  • 食べ物を口に入れたままの会話、テレビを見ながらの食事はさせない。
  • 小さな食べ物を放りあげて口で受けるような食べ方をさせない。
  • 食事中に乳幼児をびっくりさせるようなことはしない。
  • 乳幼児に食べることを無理強いしない。
  • 年長の子どもが乳幼児に危険な食べ物を与えることがあるので注意する。
  • 嚥下障害をもつ障害児では食べ物による窒息がおこりやすく、十分な注意が必要である。

とのこと。(ここまでは、オールアバウトの記事の繰り返し)

本当は怖い応急対処法

上に引用した内閣府食品安全委員会の報告では、万が一飲み込んでしまった場合の応急対処法として、「背部叩打法」「ハイムリッヒ法」(ハイムリック法)が紹介されている。バックドロップのかたちに子どもを抱えて、おなかを強く圧迫することで、異物の下から圧力を与えて空気鉄砲のように吐き出させるやり方だ。
これは、以前、教育「すくすく子育て」でも紹介されていたやり方で、自分も覚えていた。
ところが、だ。

イムリック法は救急隊員ならば誰でも知っている方法で、現在は口頭でも指導されている。有用性が認識されるに従って、合併症の報告もされるようになってきた。危険なのは胃破裂で、異物除去に成功しても胃破裂で死ぬ確率は非常に高い。また、間断のない気管内圧の上昇によって気管のどこかに穴があき、皮下気腫や縦隔気腫を起こすこともある。食道破裂は少ない。また、抱きかかえるのに容易な小児では成功率が高いが、成人になると失敗する例が増えてくる。
(略)
餅などによる完全気道閉塞に対して掃除機のホースを口に入れ吸い取った例が学会や新聞で紹介されている。普通のホースは太くて喉頭まで達しないため、ホースに取り付けて喉頭まで管を差し込むことのできるアダプターも市販されている。しかし、救急隊の教科書には一言も書かれていない。積極的に口頭指導しているという話も聞かない。掃除機は本当に危険なのか。舌を吸い込まれたって入れ歯を吸い込まれたってスイッチを切れば出てくる。ダメでもともと、異物除去できたら命拾い。指令台にも柔軟な対応をして欲しい。

ということで、ここ(東京法令出版発行「月刊消防」連載記事)では、ハイムリック法のリスクが強調され、「確かに掃除機使用は危険を伴うが、背部叩打法、ハイムリック法などで除去できない場合は、掃除機使用の指導を考慮する必要があるのではないだろうか。」と、掃除機利用の可能性について述べられている。ググってみると、ハイムリック法のリスクを指摘する人は多いようだ。*1ただし、「上腹部圧迫[ハイムリック]法は、成人には推奨されますが、お腹の臓器を傷める危険性があるため「乳幼児や妊婦」に行ってはいけません。「乳幼児や妊婦」には、背部叩打法が推奨されています。」などと書かれているところもあり、成人に対して有効なのか、幼児に対して有効なのか、評価が分かれているような感じも受ける。
いずれにしても、ハイムリック法の有効性については「すくすく子育て」ブランドで放送していたので、自分なんかは信じ込んでいたし、簡単そうだという感想も持っていたのに裏切られた気分だ。

やはり未然防止しか道はない

ただ、問題の根本は、誤飲を未然に防ぐことであるので、食事プラス部屋のおもちゃの管理に、これまで以上に気をつけるようにしたい。
なお、誤飲によって窒息だけでなく、「気管支異物→肺炎」「消化管異物→消化管損傷(特にボタン型電池)」などの問題を引き起こすことがあるようで、飲み込んで、その場では平気でもあとが怖いこともあるようだ。
目安としては、32mmよりも長さが短いものについては、なるべく手の届かない場所に置かなくてはならないそうだが、最近、やっと歩けるようになった夏ちゃんは好奇心旺盛で、すぐに椅子や机の上にのぼろうとするので気が気でない。

*1:たとえば、ここの掲示板でも、ハイムリックより掃除機が薦められている。http://www.inter-edu.com/forum/read.php?1281,1042912,1046086