Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

自分も、大学生だった〜道尾秀介『ソロモンの犬』

ソロモンの犬 (文春文庫)

ソロモンの犬 (文春文庫)

秋内、京也、ひろ子、智佳たち大学生4人の平凡な夏は、まだ幼い友・陽介の死で破られた。飼い犬に引きずられての事故。だが、現場での友人の不可解な言動に疑問を感じた秋内は動物生態学に詳しい間宮助教授に相談に行く。そして予想不可能の結末が…。青春の滑稽さ、悲しみを鮮やかに切り取った、俊英の傑作ミステリー。(Amazonより)

イマイチと評した、せきしろ『不戦勝』は勿論のこと、面白かった初野晴『退出ゲーム』と比べても、最近読んだ中ではダントツに好きな小説です。


主人公が、意中の人物に思いを伝えられずに悶々とする誠実な男子大学生というのは、女性主導の男女ペアが主人公の『退出ゲーム』に比べると、青春ミステリとしてはむしろ凡庸な設定ですが、意中のボーイッシュな智佳さんの言葉を脳内で反復したり、ちょっとした行動の裏を詮索したり、はたまた「話しかける言葉メモ」を作ったりする(そしてそれを落とした上に友人に拾われたりする)行動の数々は、共感というより応援したくなるものでした。
他のキャラクターも、とても大学生然とした、つまり年齢的には大人だけれども大人になりきれない感じがよく出ており、まずは、青春小説として、非常に満足度の高い作品でした。


そして、(道尾秀介の作品は、『向日葵の咲かない夏』『シャドウ』に続き3冊目ですが)今回も驚きの展開があり、エンターテインメントとしても大満足でした。
物語は、簡単に言えば、序盤に起きる交通事故について、探偵役?となる主人公が、過去を解き明かし、真相に迫るというものです。事故なので直接的な犯人はおらず、初めは何が謎なのかよくわからないままに物語に引き込まれていますが、最低限の登場人物で話を展開し、途中、超絶フェイントを挟みながら、変則的なフーダニット(事故の原因となった犬の動きは、誰が引き起こしたか)を回収して行くさまは、さすが直木賞作家だと思いました。
特に、「超絶フェイント」でのクラクラ感は、期待通りのことをやってくれたので大満足です。
読後感がいいのも好みです。

非常に安心して読める作家ですので、もっと他の作品も読みたいですね。


なお、タイトルにも使われ、物語の中心となる「犬」について、最近印象に残った話。

今日一番衝撃だった話。保健所に処分目的で連れてこられる犬種で最近多いのがソフトバンクCMでおなじみの真っ白な北海道犬なんだって。それ聞くと「ブームだしね」と思うんだけど連れてくる理由がすごい。「飼ってみたら日本語しゃべらなかったから」って子どもが言うから連れてきちゃうんだってさ!
 10月19日 webから