Yondaful Days!

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とても男性的なストーリー〜山田芳裕『へうげもの』(2)

へうげもの 二服 (講談社文庫)

へうげもの 二服 (講談社文庫)

この巻には、本能寺で信長が倒れる名シーンがある。
史実との違いから来る驚きもあり、シーン別では、今年読んだ漫画で一番。この名場面だけで、あと3巻くらいは極端につまらない話が続いても興味を持続して読める。


さて、へうげもののストーリーは、とても男性的だ。
つまり、古田織部が執着する対象は、「男性的」なものだと思う。
最近読んだ何冊かの本の印象からすると、大雑把ではあるが、執着するものを男女で分けると以下のような傾向にあるのではないか。

  • 女性が執着するのは関係性(特定の人間と自分との距離感)
  • 男性が執着するのは物そのもの(その他大勢から自分がどう見られるかについては関心があるが、人間関係には無頓着)

先日読んだ樋口毅宏『日本のセックス』では「男の恋愛はファンタジー、女の恋愛はリアリズム」という台詞があったが、これも同じことを指すと思う。
普通の物語は、両方の要素を扱っているが、『へうげもの』は、男性的な要素に極端に偏った小説だ。「数奇」というのはファンタジーであり、自分自身の中の理想物であり、現実的な女性たちから見れば「何それ」というものだと思う。
それに対して、女性的な要素に偏った小説に最近読んだ『残虐記』があるが、この種の小説を自分は少し苦手なことが分かってきた。
ということで、男性的な物語である『へうげもの』は、自分にとってとても読みやすい。