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悩みつづけるシッダルタ〜手塚治虫『ブッダ』(2)

ブッダ 2 (潮漫画文庫)

ブッダ 2 (潮漫画文庫)

人間こそが最も弱く、最もみにくい、生き物である。

巻末解説で、大沢在昌は、ヒューマニズムの作家−−−安易で簡単で、センチメンタルなヒューマニズムではなく、核にヒューマニズムを持った作家として、手塚治虫を称えている。
?悩みつづける、傷つき、そして傷つけつづける”ブッダを描いたこの作品こそ、その核の部分がそのまま表れた作品なのだという。


2巻になってようやく誕生を迎えるシッダルタは、生まれた直後に母を亡くす。学校では、身分の違いに悩み、放課後の遊びでウサギを射た友人が溺死するのを目の当たりにし、死に悩む。そして、ウサギの心に入り込み、死を体験したあとの叫びのシーン(台詞よりもコマ)が印象的。

いやです ぼく 死ぬのなんかいやだ!!
ぼく生きたい!
ずーっと生きたいんです 人間として

大沢在昌の言うとおり、ブッダは完全無欠な存在として描かれず、読み手の立ち位置から宗教的疑問(人間の生死など)にアプローチするので、共感・理解がしやすい。2巻末で10歳前後のシッダルタがこれからどのように成長するか、楽しみだ。


さて、1巻の登場人物達のうち、コーサラ国の勇士となったチャプラ(実質的に1巻の主人公)は、スードラであることがばれ、母とともに命を失う。ナラダッタは、チャプラの命を救うために多くの犠牲を払ったことを咎められ、師匠アシタによって、生きながらけものの世界に身を落とすことになる。
そして残ったのは、タッタ一人。身分階層では、スードラよりも下のバリアであるタッタは、シッダルタのように概念としてではなく、自らが生きていく中で実感として、社会に不満・疑問を持つ人物。動物の心に乗り移る超能力もあり、シッダルタにやや近い存在だが、3巻で二人は出会うのだろうか?