- 作者: 山本さほ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/05/20
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- 作者: 山本さほ
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2015/12/25
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作者(山本さん)と岡崎さんの小学校時代からの思い出話が内容のほとんどを占めるが、単なる懐かしいあるあるネタという評価にとどまらないのは、作者と岡崎さんの絆の強さを感じるから。
その絆を強める一番の舞台が、「岡崎家」という無法地帯。
ただ、第一話を読むとわかるが、岡崎家は、休職中の父親がいつも家にいて、母親も何をしているか分からない育児放棄状態。こんな状況で、岡崎家の姉妹二人は大丈夫なのだろうか、妹は初登場の小2のときから既にグレているが、岡崎さんもいつか反抗的になるのではないかと思うと同時に、読んだばかりの小説に似た感じの2人が出て来たのを思い出してドキドキしてしまう。
その2人こそ、角田光代『対岸の彼女』に登場する葵とナナコ。
詳細を書くのは避けるが、あんなに仲の良かった2人も、大人になった今は何も接点がない、どころか、ナナコの場合は、生きているのかどうかすらわからない。山本さんと岡崎さんの2人を見ていると、楽しい日々が描かれているのにもかかわらず、突然の親友解消が生じるのではないかと、ドキドキしてしまうのだった。
- 作者: 角田光代
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
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仲の良いナナコのことを、葵は次のように思っていた。
だいたいナナコはなんのことも悪くいったりはしないのだ。(略)
しかしいい子ちゃんぶっているようには感じられない。たぶん意識もせずにそういう言いかたをしているんだろうから、きっと、ナナコという子は、きれいなものばかりを見てきたんだろうと葵は思う。汚いこと、醜いこと、ひどいこと、傷つけられるようなことを、だれかが慎重に排した道をきっと歩いてきたんだろう、と。
p75
しかし、高2の1学期に、どういう理由でか、ナナコが突如いじめの対象になり、ナナコの家庭環境についてもさまざまな中傷が飛び交うようになる。
いわく「父親はアル中で入院中、母親は売春を内職にしているホステスで、妹は万引き常習犯のヤンキー、親子4人で2間しかない県営住宅に住んでいて、ナナコが摘んだ道ばたの雑草が毎日の夕食らしい」等々。
葵は本当のことを知らない。知らないが、そういった中傷を全く気にとめないように見えるナナコに対して複雑な気持ちを覚える。
通り過ぎさま、そんなナナコのうしろ姿を見かけるたび、葵はナナコの声を思い出すのだった。あたしなんにもこわくないの。そんなとこにあたしの大切なものはないの。実際そうなのだろうナナコの潔さに葵は強い憧憬を覚え、同時に理解不能な苛立ちも覚えた。p135
結局、葵は、断るナナコに食い下がって、夏休み直前に無理矢理ナナコの家に押しかける。
そのときのことを、葵が夏休み中に幾度も幾度も思い出したのは、家の様子が強烈だったこと以上に、ナナコの言葉が印象的だったからだと思う。
見たことのないような空間だった。散らかっていたわけでも、汚かったわけでもない、ただ何か、人が住んでいる場所に葵には思えなかった。(略)
かつてナナコに対して抱いた印象を葵は思い出す。(略)
なんてことだ。まったく正反対じゃないか。この子はだれにも守られず、見る必要のないものまできっと見て、ここでひとりで成長してきたのだ。葵は言葉を失ったままそんなことを考えた。
「あたしいろいろ言われてるけど、全然平気なんだよ」
和室でジュースを飲みながら、ぽつりとナナコはつぶやいた。(略)
「…今みんながあたしについて言っていることは、あたしの問題じゃなくあの人たちの抱えてる問題。あたしの持つべき荷物じゃない。人の抱えてる問題を肩代わりしていっしょに悩んでやれるほど、あたし寛大じゃないよ」
p170-172
葵は、自分の母親が、ナナコのことを「あんなうちの子」と言うのを聞いて心底憎んだ。
また、小夜子も、ママ友による「働くママバッシング」に辟易する様子が描かれ、プラプラの仲間は、葵の「暗い過去」を噂している。このように、『対岸の彼女』の中では、生まれ育ちや家庭のことで、他人を悪しざまに語る人たちの描写が繰り返し現れる。他人のマイナス面を都合よく取り上げて悪口を言うのは、聞き苦しいし、当人が聞いたら傷つくから、自分も耳に入れたくない。
しかし、そんなことを学年じゅうから言われているナナコは傷つくどころか「あたしの問題じゃなくあの人たちの抱えてる問題」とうそぶく。
ナナコが言いたかったのはどういうことなのか。
レタスバーガープリーズ.OK,OK! 4 (ヤングユーコミックスワイド版)
- 作者: 松田奈緒子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2003/01/17
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詩礼 幸せな家庭で育った人が嫌いなんです(略)
幸せな家庭でぬくぬくと育った人は平気で詩礼を傷つけるんです!
あの人達に詩礼達の気持ちはわからない!
詩礼ちゃんの思考の癖がよくわかる台詞だが、綾と景子の主人公姉妹に向けられた中傷は、まさに言った当人・詩礼ちゃんの問題。ブーメランという言いかたもあるが、そもそも相手に向けて飛んでいるかどうか疑問だ。
つまり、誰かを不当に貶めるような発言をするとき、そこには、自分のコンプレックスや苦手意識が自然に反映されてしまうものなのだ。ましてや、自分の家庭環境を既に受け入れているナナコにとって、何を言われても痛くもかゆくもないと、『対岸の彼女』のナナコは葵に言いたかったのだろう。
なお、詩礼ちゃんに対して、稲造は次のように言う。(不快なことがあったときには、その理由をよく考えるようにしたい。)
それはね
「幸せな家庭で育った人」が嫌いなんじゃなくて
「幸せな家庭で育った鈍カンな人」が嫌いなんだよ
両親いても不幸な人はいるし、幸せな人もいる
片親しかいなくても幸せな人はいるし不幸せな人もいる
両方いない人だっている
それに 自分が傷ついたと思う分
自分も誰かを傷つけてるもんだよ(P132)
さらに景子にも優しい言葉をかけられ、真人間になったと思いきや、なお詩礼ちゃんが迷走するのが『レタスバーガー』の面白いところだが長くなってしまうので省く。
最初に戻ると、『岡崎に捧ぐ』の岡崎さん。2巻で中学を卒業し、高校では山本さん(作者)とは別の高校に入学することが分かったが、二人の関係が変わらず、仲良くいられるといいなあ、変ないじめとかに合わないでほしいなあと願うばかり。