Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

「男性的」な正子〜宇仁田ゆみ『うさぎドロップ(2)』

うさぎドロップ  (2) (Feelコミックス)

うさぎドロップ (2) (Feelコミックス)

俺がりんを育ててるのか、俺がりんに育てられてるのか――? りんの出生の謎…それを解く手がかりは祖父の秘密の遺言状。ダイキチ、りんの母親と全面対決!? 保育園通いに慣れてきたと思ったら今度は小学校の入学準備。ダイキチは悩みすぎて毛が抜けそう!? 見逃し厳禁の第2巻! (Amazonあらすじ)


りんの母親である正子、ついに登場。
りんも大吉もそうではない中で、髪の色が「黒髪」という主人公の色であるところにまず驚き。
さらに漫画家というアクの強い職業で、象徴的な意味での「母親」という扱いを避ける設定。読者は、りんの母親としてではなく、正子として、彼女を見ることになる。
そして、これまでにないほどの大吉の苛立ち。勿論りんへの愛情の裏返しだが、正子に対しては憎悪と言わないまでも湧き上がる疑問を隠さない。
読者としても、育児を放棄した側が何で威張ってるんだよ!とも思うが、男性としては正子さんを単純に責めることができるだろうか。通常のシングルマザーの問題は、男性(父親)側が親としての自覚がなく、幼いために、育児から逃げて生じるというパターンが多いように思うが、その意味では、ここで登場する正子の、自分の産んだ娘をドライに捉え過ぎる感性は非常に男性的。
そう考えると、この漫画の基本的な構造は、男女を逆転させて、子育てを、そして親の愛情を問い直す、というものなのだろうか。

←正子の反応に呆れる大吉の思い

その他のキャラクター

最初の登場人物欄にワーキングマザーの後藤さんがいる。やはり作者に一番近い立ち位置のキャラはこの人なのかも。で、作者の中で分裂して生まれた人格が正子…という読みはどうでしょうか。


コウキの母親に対して「母性」という言葉が使われるのも面白い。作者の考える「母親」の、ある意味理想的な像がここにはあるのかもしれない。一方で、この漫画には、のほほんとした専業主婦は登場しない。この巻では、大吉の母親も、出産ギリギリまで働いていたことが明かされ、メインキャラには、専業主婦タイプの母親がいないような気がする。


りんは小学生に向けて成長中。お道具箱のおはじきや机選びなど、子どもの成長に合わせた具体のイベント設定も、やはりこの作者ならではなのかなと思う。だからこそ、4巻と5巻に入るはずだった小学校低学年の面白い時期をすっ飛ばすのは何故か考えてしまう。

言葉

決断する大吉の言葉→

じゃ 俺 りんを養子にするよ
あいつがイヤじゃなければ…(略)
母親に育てる気がないなら
これからもりんは俺が育てていくわけだし
どっちにしても
もう他の人にバトンタッチすることも絶対ないんだ
だってそれはりんに対して一番やっちゃいけないことだろ

大吉の提案に対するりんの回答→

やだ
わたしのおとうさんは
おじいちゃんだもん
わたし かがりんっていうなまえがいい
おじいちゃんとおそろいのなまえ…
だいじなの