Yondaful Days!

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TIGER&BUNNY、全25話を見終えての辛口感想


TIGER&BUNNY、全25話見ました!
終わってみると退屈な回がほとんどないアニメで、25話があっという間でした。
デザインが優れているキャラクターが沢山出てくるので、グッズ欲をそそられるというのは分かる気がします。
ヒーロー以外での好きなキャラクターは斉藤さんです。


さて、まずは前回の予想(15話まで見た時点でのラストまでの展開予想⇒コチラ)の採点から。

  • アンドロイドによる「疑似ヒーロー」を13話で生き残ったクリームが操り、ヒーロー達がピンチに。

⇒15話までの内容から予想できる通り、アンドロイドによる「疑似ヒーロー」構想は確かに存在したが、クリームは、18話で自殺してしまっており×。(というか、13話の時点でクリームが瀕死だったことに気づかなかった…) 【10点/30点中】

  • ルナティックは、何らかのサイドストーリーと絡めつつクリームと対決し、自らの死と引き換えにピンチを救い、最後の最後に良い人になるパターン。

⇒予想外にルナティックは死なない。それだけでなく、終盤に出番なし、という信じられない展開。予想では、マーベリックをラスボスとして、少なくとも一人中ボス(その一人としてクリーム)を想定していたが、結局、中ボス的なものは偽タイガーだけ。あれだけの権力を握っていたはずなのに、「悪の一味」の層の薄さを感じてしまう。 【0点/30点中】

  • 逆に、マーヴェリックさんが最後の最後に悪の本性を現して(実はアンドロイドだったとか)、レジェンドの姿で虎徹と対決。

⇒マーベリックが「悪」であることが分かったのは全25話中の第19話ということで、想定よりもだいぶ早かった。それにしても、レジェンドの話が最終話で全く扱われないというのも完全に想定外。 【10点/40点中】


ということで、合計得点は【20点/100点】で、赤点でしたが、まあ、いつものことです。
既に言いたいこともちょこちょこ書いているけど、以下は16話以降の感想。

19〜22話は良かった!

一番興奮した展開は、バーナビーがマーベリックに再度記憶を書き換えられる第19話。
マーベリックの強さ・怖さが一番強く感じられる回で、マーベリックと、その能力に対する恐怖が強いため、その反動で、楓がマーベリックからコピーした能力で皆(バーナビー以外)の記憶を元に戻す第22話でカタルシスを感じることができる。
一方、このあとは話が進めば進むほど、ラスボスであるマーベリックの戦い方に「穴」が増え、どんどん小物に感じられてしまうという意味で、物語的にはピークとなるのが、この19〜22話あたりだと思う。


「死なない」問題

ここからは少し文句を…。


このあと劇場版があることも知っており、全員死なないと分かりながら見ていたので、「都合のいい展開」もある程度は想定済みだった。しかし、最終2話でヒーロー達が、実質的に偽タイガーに勝てていないのに、「誰も死なない」というのは不満が残る。
第24話での偽タイガーの倒し方は、「敵の武器で倒す」ところが惜しいが、1人を犠牲にして2人の力で勝つ、という王道だった。しかし、26話を見てしまうと、ここも1人も仲間を失わずに勝っており、イマイチ(6人のヒーローで歯が立たなかった相手に)2人でも勝てた理由が納得し辛い。
第25話での偽タイガー戦は、ヒーロー達が負ける一歩手前の場面で突如セーフティモードが発動という、ラッキーに救われる。このタイミングが自分には理解できず、ただただ都合が良過ぎるように見えてしまった。*1結局、ヒーロー達が生き残れたのは、実力ではなく運のおかげだった。
そして何より、虎徹が24話ラストで死んだように見せかけて、25話でしれっと理由もなく生き返る「魁!男塾」的な展開。
死なないと分かっているのだからスルーしてもいいのだが、こういった「都合のいい展開」の積み重ねが、終盤の盛り上がらなさに直結していると思う。

  • バーナビーの記憶の取り戻し方が突然過ぎる(23話)
  • (相手から奪ったのではなく)落ちていた敵の武器を使って敵を倒す(24話)
  • セーフティモードが発動して助かる(25話)
  • 死んだと思っていた虎徹が生き返る(25話)

ここら辺の理屈に、(終盤話題に上らない)レジェンド、ルナティック、ウロボロスの話が絡めば納得しやすかったし、当然それを期待していた。伏線を貯め込み過ぎると、最終回で情報過多・消化不良となるパターンもあるが、TIGER&BUNNYの場合は、「薄味過ぎる」最終回だったといえる。
なお、死んだと思っていた人が生き返るという展開は、小学生のときに見た「逆転イッパツマン」が衝撃的で、かつ、その理屈が納得のいくものだったのを思い出す。(イッパツマンは中盤で主人公が死んでしまう)

「殺せない」問題

「死なない」問題だけではない。
最終話で、ヒーローたちが、その「正義」ゆえ、諸悪の根源であるマーベリックすらも「殺せない」ところは拍子抜けだった。汚れ役は、過激な「正義」を持つルナティックに全て任せてしまおうというのでは、ヒーローたちの本気が感じられない。
少し戻ると、第25話(最終話)は、セーフティモード発動という都合よすぎる設定で緊張感がなくなり、マーベリックの告白すらHERO TVで生中継していたという事実が明らかになったことで、さらに緊張感がなくなり、シリアスからコメディ寄りになったことも影響している。
本来なら奴の息の根を止めるのはバーナビーの役目のはずだが、(緊張感が緩んできた)物語の流れと合わなくなっていたし、また、マーベリックが、バーナビーが怒ってまで対峙する価値のない相手に成り下がったということなのだろう。
結局のところ、23話以降の盛り上がらなさは、(最後は人質を取って生き延びようとする)マーベリックの小物ぶりが全ての元凶ということもできる。

「HERO TV」問題

そして、最大の問題はコレ。
他の特撮ヒーローものと比べたときのTIGER&BUNNYの設定の特殊性は、「HERO TV」にある。
ヒーローが街の正義を守る様子がテレビ番組として提供され、娯楽として受け入れられているということは、市民は日々の生活に不安を、恐怖を感じていないということだ。
しかし、それはヒーローと敵(悪)のパワーバランスによるのであって、市民の犠牲者は基本的には発生してはならないし、ヒーローが悪に頻繁に負けるような世界や、逆に、悪を撲滅した世界では、「HERO TV」は娯楽として成立しない。。
つまり、娯楽として成立するためには、ある程度「パワーバランスの調整」が必要になる。それこそプロレスのように。
だから、シュテルンビルト市を牛耳るマーベリックが裏で手を回していることが19話で判明して、「やはりそうだったか」と見ている側は納得する。継続的にこのような番組、そしてHERO業を成立させるためには、当然「やらせ」が不可欠だと多くの人が思っていたはずだからだ。第19話というのは、これまでモヤモヤを感じていた「HERO TV」にNOを突きつける、胸のすく展開だったといえる。
したがって、最終話でマーベリックが切羽詰まったところで「HERO TV」が復活するというのは、一見、原点回帰的にも思えるが、物語の流れからすると逆行しているようにしか見えない。
第一、アニエスは、これまでマーベリックの下で働いていて、「この番組は何か変だ」と思っていたに違いない立場の人。さらに、この少し前までテレビカメラで無実の虎徹を追い回しており、「HERO TV」の持つ、暴力的で、危険な面が身に染みて分かったはずの状況。
にもかかわらず、無邪気にマーベリックを断罪して、あくまで視聴率にこだわるというのは、頭のネジが外れているとしか思えず、全く共感ができない。


似た話として、仮面ライダー鎧武では、当初はダンスチーム同士のバトルで得点を競い合う話がメインで「HERO TV」と類似する部分がある。しかし、途中からは、それらが遊びではない怖いものだということが市民にもわかっていく、という展開になった。考えてみれば、TIGER&BUNNYもジェイクの事件があったあとでは、視聴者は無邪気にテレビ番組を楽しむことはできないはずだ。
アニエスだけでなく、シュテルンビルト市民全員がバカなのか…。


総括

最終話では、ウロボロスの黒幕が他にいることが暗示され、ラストシーンでは、シュテルンビルト市政の深い所までウロボロスが入り込んでいることも推測される。また、ルナティックとレジェンド、レジェンドと虎徹(と能力減退)のエピソードがメインストーリーにほとんど絡まなかったことも含めて、25話で全く話が終わっていないし、終わらせる気を感じられない。
このことは残念だったが、映画や続編を考えれば、こういう終わらせ方もありだとは思うし、自分が問題にしたいのはそこじゃない。
自分が比べるのは、結局、仮面ライダーシリーズということになるが、児童向けの仮面ライダーと比べても、ヒーローの悩みの掘り下げが甘いと感じる。
ヒーローが活動中に罪のない人を犠牲にしてしまったり、もしくは救うことができなかったり、そういう定番の話がそもそもない。折紙先輩のエピソードには近いものもあったが、それ以外は、どのヒーローもほとんどが、自分がヒーローを続けるかどうか、家族との時間をどうするか、他のヒーローに迷惑をかけないかどうか、と言ったサラリーマン的な悩みに留まる。
また、偽タイガーを作ったロトワングが差別的な発言を繰り返し、クリームの昔話にも出てきたように、能力者であるNEXTは差別される。そういった差別の問題についてももっと踏み込んでも良かったように思う。仮面ライダーファイズは、そういう側面が強くあり、だからこそ敵側にも強く感情移入ができる話になっていた。*2

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ということで、比較するものが正しいかどうかわかりませんが、仮面ライダーシリーズとの比較からすると、23話以降の盛り下がる展開が本当に残念でした。作劇に誠実さを感じられませんでした。噂によれば、自分の悩みは劇場版で解決されるようなものでも無いようだし、純粋な続編を期待したいです…。
キャラクターデザインは本当に好きなので、もっと彼らの動く様子が見たいですね。
なお、感想を書いてみて、やはり自分は、いくつかの平成ライダーに非常に思い入れが強いのだなと思い直しました。小説版の評判がいいので、そちらも読んでみたいです。

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TIGER&BUNNYの前半感想

TIGER&BUNNYを見たからこそ気がついた、自分の「ヒーロー観」を確認するために、関連本を読んでみました。

*1:少し調べると、斉藤さんがセーフティーモード発動のためのパスワードを探し出して止めた、と解釈するようです。よくわからなかった…。

*2:なお、仮面ライダーファイズは、暗闇での蛍光色が映えるデザインで、少しタイバニに似ているかも。