Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

「ただの風景」を「楽しみ」に〜越野弘之 『昭和レトロ自販機マニアックス』

昭和レトロ自販機マニアックス

昭和レトロ自販機マニアックス


自動販売機の思い出といえば何だろう。
たぶん、小学校に上がる前、父のゴルフの練習についていったのだと思うが、帰りに瓶のジュースを買ってもらえるのを楽しみにしていた覚えがある。選べるのは、コーラとスプライトとドクターペッパーで、自分はドクターペッパーを好んで選んでいた。
それ以外では、ガチャガチャを除けば、自販機に対して特別な思いを抱くことは無かった。「当たりつき」はいつも気になっていたが、高校の部活帰りに買う飲み物も、もっぱら売店だった。


つまり、自分にとっては、自販機は「ただの風景」として視野には入っていたが、しっかりと見てはいなかったかもしれない。それこそ、先日読んだ『狛犬コレクション』の狛犬と、ほとんど同じ位置づけだ。


だからこそ、この本の面白さは、コンテンツよりも、作者の「異常な情熱」によるところが大きい。
特に第1章「レトロ自販機NEWS」の異常さが素晴らしい。取り上げられた5つのニュースの見出しを読むだけで、何だか分からないがワクワクしてくる。

  • 1.岐阜レトロミュージアムハンバーガーと川鉄めん類が稼働
    • 昭和のオートスナックを再現
    • マルイケ食品のチーズバーガーで心もお腹もいっぱいだ!
  • 2.佐原商店のDNAを継承するうどんそば自販機が復活
    • うどんそば自販機の名店 佐原商店を受け継ぐ空間
    • 懐かしき佐原商店の面影
  • 3.中古タイヤ市場相模原店にレトロ自販機御三家新規設置
    • 神奈川に現れた自販機の新たな聖地
    • レトロ自販機の新たな伝説の始まり
  • 4.自販機の撤去、移動など レトロ自販機業界に衝撃が走る!
    • 日本最北めん類自販機ついに消滅してしまった
  • 5.レトロ自販機に新商品&レアメニューが登場
    • 真っ白なボディーからチャーシューメン
    • ゴーダチーズが決め手 新ピザトースト


また、現存するインチキガチャガチャを全国各地からレポートする第2章「コスモス自販機の世界」や、レトロ自販機を主目的に旅程を組んで旅する、第4章「昭和の思い出探し全国のレトロ探訪」などは、ついていけないレベルの底知れぬ情熱を感じて面白かった。
狛犬もそうだが、こういう情熱を知ることによって、旅先でふと見た風景に興味を持てるようになるし、風景の奥にある「人間」を感じることができる。そういう意味では、マニアの視点ではなく、ミーハー気分で、いろいろなことに首を突っ込んでおくと、世界が広がる、とは言わないが、世界を楽しむための種まきができるかもしれない。

行ってみたいレトロ自販機スポット

参考(過去日記)

⇒自分の中で「ただの風景」だった鉄塔が一気に「楽しみ」に格上げしたオールタイムベストな一冊です。