Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

塩野七生『ローマ人の物語1』(2002/日本)★★★★

福田和也『悪の読書術』に影響を受け、教養のために手をつけた本。文庫で読んだのだが、字がやや大きめなのもあり、予想よりもずっと読みやすい。歴史物にほとんど興味がなく、高校時代も特に世界史の勉強をしていないような自分でも、ほとんど抵抗なく読むことができたのは塩野七生の筆力によるのかもしれない。実際、平行して読んでいた司馬遼太郎(時代小説)、ジェイムズ・ティプトリー・JrSF小説)と比較しても、快適なスピードで読み進むことができた。
簡単なあらすじ。

  • ローマの歴史は神話の世界とあわせて語られる初代の王ロムルスとともに始まり、その後、王政は7代続く。なお、王政といっても世襲ではなく、終身の大統領制とでもいうべきものであった。
  • その後、ローマは、二人の執政官からなる共和政に移行し、更なる発展を目指して、先進国ギリシアに視察団を出すのであった。

内容で、特に興味深かったのは、一神教多神教の違いからローマ人の特性を説明した部分。一神教ユダヤ教)とは異なり、多神教(ローマ、ギリシア)では、人間の道徳倫理の正し手を宗教(神)に求めない傾向がある。人間の行動原則の正し手を
 宗教に求めたユダヤ
 哲学に求めたギリシア
 法律に求めたローマ人
であり、この点だけでも、三民族の特質が浮かび上がる。
 また、繰り返し説明されるように、ローマ人の大きな特質は戦争のあと、敗者(敵)を虐げず、自分たちに同化させていくやり方をとったことである。7代続いた王についても、ラテン、サビーニ、ラテン、サビーニ、エトルリアエトルリアエトルリアと民族がバラバラである。この点はギリシアなどとは大きく異なるところで、ローマ人の特質であるようです。