Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

上原 隆『友がみな我よりえらく見える日は』★★★

友がみな我よりえらく見える日は (幻冬舎アウトロー文庫)
以前、どこかで「落ち込んだときに読む本」という紹介をされていたが、それはどうか?ちょっと変わった本なので、なんともいえないが、自分が落ち込んだら、やっぱり島本和彦の諸作品を読むかなあ。
簡単に言うと、解説で、村上龍が書くとおりの本。

この時代に生きる普通の人のことが普通に書いてある。著者は、時代が悪いとか、戦後民主主義が悪いとか、日本人はどうしてしまったんだとかそんなことは一切書かない。普通の人が今どうやって生きているのか、そのことを演出を排して記録していくのだ。

感想は?と問われるとなかなか難しい。作者自身があとがきで「他人はどのようにして自尊心を回復するか」がテーマだと書いてあるが、文章自体は非常に淡々としており、テーマに沿って作者が何か語りかけるわけではない。
傍らから見ると「落伍者」に見える芥川賞作家 東峰夫の言葉「自分で歩く自分の道は自分独自のもので、ひとりで歩くしかない」が、まさにこの本の言わんとするところなのか、結局、「生きる為のレシピなんてない」(Mr.Children「終わりなき旅」)ということに尽きる。
暗い話ばかりだが、これからの自分の人生の限りない平行世界のひとつとして、結構リアルに感じる。そういう意味では、現実世界で「生きる覚悟」を持つ、という、非常に根本的な部分でためになったかもしれない。
追記:読んでいる途中、ひどく既視感を覚え、前に買って読んだのを忘れているのでは?と相変わらずの心もとない自分の記憶力が不安になりましたが、村上龍の『ラブ&ポップ』『共生虫』で、引用があり、そちらを覚えていたようです。安心。