Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

NHKスペシャル「阪神・淡路大震災10年/第2回 マンション再建 住民の選択」

震災から10年。被災地の中心部に新築マンションが立ち並ぶ中、今も被災時の状態のまま残ったマンションをめぐる問題に焦点を当てた番組。
何故、そのようなマンションが存在するのか?
被災したマンションでは、補修と建て替えの二つの選択肢があるが、建て替えには住民の80%の賛成が必要である。そして、焦点のマンションは、建て替え派と補修派が対立したまま、妥協点を見出せないでいる。実際には、被災直後に80%の合意を得て一旦建て替えが決まったあとで、やり方に問題があったと「補修」派側が裁判を起こし、投票は無効とされ、再投票の結果、僅差で80%に満たない結果となった経緯がある。
一番大きなお金の問題だが、この例では、建て替えならば一戸当たり2000万円、補修ならば300万円。建て替えを選べば、二重ローンという悪夢が待っているが、安全面を考えると、補修しただけでは怖くて住めない。昨年11月に行われた理事会で、やっとのこと、建て替えが決定するのだが、被災当時380万円あった一戸当たりの買取価格は60万円まで下がり、「補修」派は立退き料として、これと同額を受け取り、住む場所を失うこととなった。「補修」派のほとんどが年金生活をする高齢者の人たちだ。当然、二重ローンなど払えるはずが無い。
「建て替え」派の人の中に「同じところに住む人を裁判で訴える気持ちがわからない」という人が複数いたのが印象的だった。これまで多くのことを阿吽の呼吸で決めてきた日本人が、対立する意見の妥協点を見出していくことが不得意であるし、慣れていないことがよくわかると感じた。
最近、特に公共事業や発電所、ごみ処理施設などの大規模施設の建設について「合意形成」という言葉がもてはやされるが、マンション一つをとっても、これだけこじれるのを見ると、言葉の印象の通り「スマートに」ことを進めることが出来るとはとても思えない。今回の例では、まとめ役の管理組合理事長代理を務めた37歳の方(建て替え派)が仕事も忙しい中、補修派の家にも足繁く通い意見を聞いたため、立ち退きとなった補修派もある程度は納得して結果を受け止めることができたようだ。結局、現時点では、そういう泥臭いところが重要なのだろう。*1

*1:当然、議論を円滑に進め、不満のないように、もてる情報はなるべく開示し、偏りがないようにする等の基本的な部分はあるが。