Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

齋藤孝『読書力』★★★★

読書力 (岩波新書)
あまりに読み進まない『それから』に業を煮やして、『それから』中に読んだ本その1。
ここ数年「〜力」とか「〜する技術」という書名が本屋に溢れている。*1何かと不安なビジネスマンの欲求が現れているのだろう。でも、そういう売れる本は逆に手に取りにくい。(じゃあ、樋口裕一『頭の〜』を買うな!)
また、一方では、音読ブームから始まった斉藤孝の著作は、それこそ山のように見る。しかし、多作ということで中谷彰宏のイメージを重ねてしまい、なかなか信用できない気がしていた。
今回、友人に薦められて、この本を読んだが、そうでなければ、上記の「二つの障害」のために、死ぬまで読まない本となっていたかもしれない。
さて、実際に読んでみると、非常に好印象。文章に、斉藤孝の人の良さが出ている。信頼置ける人物だと思わせる文章の書き方だ。言葉の選び方が易しく、でも内容や構成、主張がはっきりしている。(それは目次を一覧しただけでもわかる。)これなら、同じ作者の他の本も読んでみようという気になる。「新書を是非読んだ方がいい」と薦める理由として「新書は書かれてある内容に比して値段が安くて手軽=コストパフォーマンスが高い」ことを挙げている人の書いているのだから、ある程度自信を持って出している本なのだろう。
内容は、読書の効用を、特にあまり本を読む習慣が無い人を対象に説く、といったもの。多少贔屓に過ぎるところもあると思うが、読書好きの自分の大部分が肯定されたようで嬉しい。*2
序文が少し長いのだが、大事がことが多く書かれている。

  • 読書力のあることの基準=4年間で文庫系100冊、新書系50冊の読破が必要
  • ただし「精神の緊張を伴う読書」であることが必要。これとエンターテインメント系の読書の境界線は司馬遼太郎の小説。(P8)

4年で文庫100冊新書50冊は何とかなる気がする。しかし、司馬遼太郎より軽くない本を文庫100冊というのは難しい条件だ。『それから』が散々だったので、先行きが不安ながらも、目安の一つとして今後読書に取り組もう。
最後の方の章では、この人の売りである「音読」と「三色ボールペン」が出てくる。本は最近図書館で借りずに買ってしまうので、線を引くのも良いかもしれない、と早速買ってきて試した。しかし、ペンを出すのが面倒くさく、実際には、あまり使いこなせないでいる。また、使いたい時に限ってペンを携帯していない。(机の上に置いたままだったり・・・)ただ、受け身になると眠くなりもするので、線を引くことによって「主体的に」読書に取り組むことが出来るのはとてもいい。少しずれるが、個人的にオススメなのは、テレビを見ながらメモを取ること。あとでそのメモを見返さないとしても、漫然と見ないことで、頭の整理になる。インターネットの場合の同様の方法が、はてなブックマークだとかフォークソノミーだとか、ということになるのかもしれない。*3
話が逸れたが、ひとつひとつ説明するよりは、未読の人は、一度著作にあたるといいと思う。「目から鱗」というタイプではないが、(どの本を読んでもそうなのだろうと思うが)方法論に説得力があり、気軽に実行に移せるような内容になっているので、実効性が非常に高い本だと思う。
ところで、巻末に「文庫百選」のブックガイドがついている。買いやすい「文庫」に限っているというのは素晴らしい。このリストがあるだけで十分買う価値がある。これも参考にしながら、今後の読書計画を立てていこう。

*1:それこそ、ブログ界の有名人「切込隊長」の新刊は『けなす技術』だと聞くし

*2:本書の中では、読むことによって暗黙知が明確化することを読書の効用の一つとして挙げている(P85)が、まさにそういう部分も大きい。

*3:現在勉強中。