Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

ホームズ、クトゥルーをまとめて履修(開始)できる~ジェイムズ・ラヴグローヴ『シャーロック・ホームズとシャドウウェルの影』

先日、DCユニバースに疎い自分でも映画『フラッシュ』を楽しめたという話を書いたが、マーベルにしろ、スター・ウォーズにしろシリーズが多過ぎて、途中から入るには躊躇するような作品群がある。
シャーロック・ホームズもドラマ・映画も含めてほとんど馴染みがなく、小学生のときに少年探偵団シリーズの隣にあったポプラ社の全集の数冊を読んだだけだ。
だから、ホームズ関連作品が出ても、特に「読みたい」という欲は湧いて来ることなく、自分とは別世界だと感じていたし、今さら本編を読むことはないと思っていた。


そんな自分がこの本を読んだきっかけは、その特殊な設定にある。以下あらすじ。

ある日突然H・P・ラヴクラフトが血縁であることを知らされた作家ラヴグローヴ。彼はラヴクラフトが保管していたジョン・ワトスン博士による秘められた原稿を託される――1880年ロンドン、ワトスンはひょんなことから怪事件を追う探偵ホームズと出会う。事件の背後にいるのはクトゥルーの古き神々! ふたりは深淵へと足を踏み入れる。ホームズ物語とクトゥルー神話を大胆にマッシュアップした前代未聞のパスティーシュ

そう、クトゥルー


クトゥルーもまた、全く触れて来なかったジャンル、かつ、最近は、田辺剛の漫画版など読みやすそうな媒体のものもあり、そろそろ読みたいと思っていた。*1


で、結果として、非常に面白かった。
連続殺人事件が題材となるが、「推理」の要素は薄い。ちょうど先日映画を観たインディー・ジョーンズの映画に近く、「冒険活劇」という言い方がしっくり来る。まさに「ページをめくる手が止まらない」内容で、今季最高の読書スピードだった。
クトゥルーの扱いも上手い。物語前半で、ホームズは、連続殺人事件に関わっていたアヘン窟の親玉であるグンフェンからクトゥルーの概念についてレクチャーを受けることになる。それに加えて、ワトソンがアフガニスタンでの恐怖体験を語ることで、クトゥルーとは何か?について、自分のような新参者でもある程度把握することが出来る。

また、後半にグンフェンに代わって登場する敵役も癖があって楽しく、本編に登場する人物でもあるので、是非「正典」(コナン=ドイルによる原作)を読まなければという気になった。
あまりに面白いので、最近発売された3部作の2作目を買ったら、最初に『緋色の研究』と『恐怖の谷』のネタバレを含みます、との注意書きがあったので、いよいよ「正典」通過は必須となった。さらにドラマ『シャーロック』も是非見てほしいと紹介されたが、こちらは舞台を現代に移し替えてホームズをやっているんですね。面白そう。(時間がない…)

*1:なお、読んだことがあるクトゥルー作品もあり、栗本薫の『魔界水滸伝』シリーズがそれにあたる。ただ、そちらも序盤の3冊くらいしか読んでいない、という意味では中途半端。これも読みたい。永井豪の表紙のやつで…