Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

暗闇から始まるトリッキーなジュヴナイルSF〜沢村凛『ぼくがぼくになるまで』

ぼくがぼくになるまで (エンタティーン倶楽部)

ぼくがぼくになるまで (エンタティーン倶楽部)

何も見えない、何も聞こえない、真っ暗闇。ここは、どこ? ぼくはどうして、こんなところにいるの?
だけど、ようすをさぐろうにも、ぼくには手がなかった。頭も、足もなかった。からだがなかった。声も出なかった。
こわい。どうして、こんなことになったの? ぼくは、だれなの? どこに住んでいたの? たすけて。たすけて。たすけてたす…。
Amazon紹介文)

さて、先日『ルート225』の感想のところで触れた「児童書ジュヴナイルSF小説読み比べ大会」で挙げた本の中で、よう太の評価が高かった一冊。
Amazonの紹介文で書いた通り、最初の章は「暗闇のなかのぼく」がタイトルで、自分が誰だかすらわからないところから物語が始まる。記憶がない、どころか、自分が人間だったのかすらわからない。自分の身体がどんな風かすら見えない中、ひたすら思考だけが進む、という変わった出だしだ。
その後、物語が動き出してからも、序盤から主人公が死ぬなど、展開も読みにくく、振りまわされている間にあっという間に読みおわる。展開だけでなく、オチについても満足の一冊で、はっきりしたネタバレ要素があるため、ぼやかして書くが、かなりトリッキーな小説になっている。
ただ、筋は分かりやすいので、小学校3,4年生以上なら十分理解して楽しめるだろう。
大人でも十分に楽しめるし、子どもには是非、こういうトリッキーな書き方の小説もある、ということを知ってもらい、後に戻れない読書迷宮に突き進んでほしい。
ということで、我が家のように親子で読んで感想をわけあいたい人には特にオススメ。


沢村凛は、『ヤンのいた島』で第10回日本ファンタジーノベル大賞優秀賞を受賞しているということで気になるが、『黄金の王 白銀の王』や『瞳の中の大河』など架空世界を舞台とした歴史活劇風ファンタジーの評価が高い一方、労働基準監督官が主人公の『ディーセント・ワーク・ガーディアン』や、近作を見てもミステリ(『タソガレ』)や宇宙を舞台にしたSF(『リフレイン』)、児童小説である本作も含めて、相当に幅が広い。今は十二国記を読んでいるから架空国家を舞台にしたファンタジーは避けて、まずは、労働基準監督官の小説を読んでみたい。

瞳の中の大河 (角川文庫)

瞳の中の大河 (角川文庫)

黄金の王 白銀の王 (角川文庫)

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ディーセント・ワーク・ガーディアン

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タソガレ

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