Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

山田真哉『さおだけ屋はなぜ潰れないか』★★★

さおだけ屋はなぜ潰れないのか? 身近な疑問からはじめる会計学 (光文社新書)
鈴木謙介カーニヴァル化する社会』と連続して読み終えたのだが、山田真哉鈴木謙介には共通点がある。二人とも1976年生まれなのだ。僕は1974年生まれで、彼らは二つ年下で、僕の弟と同い年ということになる。
ネット上では、年齢をあまり気にしない人が多いのかもしれないが、僕はやはり気になる。特に面白い文章を書く人の年齢はすごく気になる。それは、僕は音楽家ではないし、作家でもないが、文章を書くことは出来るからだろう。例えば40歳の人が書いた文章に感銘を受ければ、その後は、目標のひとつとして、その人を捉える。自分と同世代、ましてや若い人の文章に感銘を受ければ、ケツを叩いて自分を鼓舞する。勿論、文章技術の問題でなく、人生経験の面で刺激を受けることが大半だが。
 
閑話休題
長い人生においてお金とは一生付き合うものであり、そういう意味で、会計学というのは、実利的で、苦手なよりも得意な方が、長期にわたって得をする学問だという認識がある。そして、僕は会計が苦手だ。
したがって、帯に「数字嫌いでもスラスラ読める!」と書いてある、この本には以前から興味を持っていたが、書店でパラパラめくったときにかなり目立つフォントの大きさが内容の薄さを連想させ、なかなか実際に買う気にはならなかった。
しかし、木村剛の本だったかで、会計学の勉強が薦められており、まずは苦手意識がなくなればメッケモンということで100万部達成後の今回初めて購入した。
 
予想通りというべきか『さおだけ屋』は異常に読みやすく、内容は薄かった。やや抽象的な話の多い『カーニヴァル化する社会』と比べると、費やした時間は1/3以下ではないだろうか。そして内容は予想通りの期待はずれだった。
実際、本書の副題は「身近な疑問からはじめる会計学」で会計の入門書としての内容を期待していたが、結局「楽に会計学が学べる」という本では全く無く、会計に対する苦手意識が払拭されたとはとてもいえない。
 
しかし、まえがき、あとがきを読み、山田真哉のそのほかの著作を見て、出版意図を理解した。つまり、この本は、会計学の入門書ではなく、会計学の入門書のイントロ部分を新書というかたちに特化させた本なのだ。実際、同じ著者によって『世界一やさしい会計の本です』が書かれているのだから、これよりも易しい『さおだけ屋』は「会計の本」ではあり得ない。
僕のように、もう少し突っ込んで会計学が知りたいと思った人に『世界一やさしい・・・』を薦めるための試供品みたいな位置づけ*1の本なのだろう。そういう意味では、自分はまんまとそれに引っ掛かった模範的な客ということになる。そして、どの分野においても、その分野に専門でない人に対してのアプローチとして、こういう取り組みが必要なのかもしれない。
 
ただ、この本はやっぱり易しすぎる。巻末の用語解説は丁寧だが、索引は不要だろう。新書の形はしているが、中身は新書の平均レベルからかなり落ちる。費用対効果という意味では、もう一段階上のレベルを期待したかった。残念。

*1:ところで、試供品的な位置づけのテレビ番組が『世界一受けたい授業』だと思っていた。この前初めて番組を見たら、それはやや過大評価だと気持ちを改めた。多分出演した「先生」にもよるのだろう。