Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

乙一『GOTH〜夜の章、僕の章』★★★★

GOTH 夜の章 (角川文庫) GOTH 僕の章 (角川文庫)
友人でかなりの読書家id:kouxxの高い評価を聞いて早速手にした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
変態の小説である。
出てくる人、出てくる人、ほとんどが常人には受け入れられない思考経路を辿る。
故に、僕は、あまり読書経験のない小中学生には、この本を手にとってほしくない。登場人物たちは、主人公も含めて、さまざまな妄想に取り付かれている。真っ白な心でこの本を読んだ場合、そういった妄想に感化される恐れがあるのではないか、と僕は危惧する。
繰り返すが、主人公もまた変態なのだ。特に「リストカット事件」で主人公が取る行動は全く予想もつかないものだった。しかし、これが連作短編という形式で成功していることは、作者が相当なバランス感覚の持ち主だということを示していると思う。例えば、グランド・フィナーレも変態な主人公の小説で、あれはあれで「アリ」だとは思うが、あの主人公で連作があるとしたら、正直言ってどうかと思う。一作だけなら変態の主人公でも傑作は作れるが、連作となった場合、読者が共感できるギリギリの範囲に、主要登場人物の性格を収めておく必要がある。そして、森野と僕は、何とか枠の中に収まっている。*1
さて、恥ずかしながら告白すると、連作小説の最後にあたる「声」だが、ちょっと意味が分からなかった。いや、意味自体はわかるのだが、僕にはどうしても全体としての説明をつけられない。ちょっとぐぐっても、うまい解説をつけているところは無いようだ。ラストということで期待して読み、期待通りの大ネタが降ってきたのだが、振り返ると整合が取れていない感じ。これがすっきり分かると、また印象は違うのだが・・。
あとがき含めてすべて読んでみて、再度振り返ると、面白いんだけど、面白すぎるだけに、やっぱりある程度分別がつく人が読まないと危険な気がする。「声」関連でぐぐったときにも、主人公の少年を「かっこいい」と感じる人の意見を散見したが、その感覚はちょっとおかしい。やっぱり、ある程度オーソドックスな本を読んだあとで、これを読む、というようにしないと、訳分からないこと考える子供は出てくると思う。
ここであまり突っ込む気はないが、『バトルロワイヤル』なんかも、単純に面白い小説だと思うが、やはり、ある程度の読書経験を積んでから読むべき本だと思う。


*1:実は、ここまで書いたあとで「土」以降の全作品を読んだ。「土」での主人公の行動は僕の感覚では完全にアウトです。