Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

星野之宣『ヤマトの火』★★

ヤマトの火 (MF文庫)
『竜の柩』を読んで、古代史に興味を持った僕は、そこら辺に強い友人(id:D16)に、オススメの関連本を聞いてみることに。
そこで薦められたのが星野之宣邪馬台国卑弥呼の謎に挑んだ『ヤマタイカ』。ちょうど、諸星大二郎星野之宣という流れを想定していた*1ので、渡りに船とばかりに、その話に飛びついた。・・・のだが、最寄の本屋には『ヤマタイカ』がなかったため、仕方なくプロローグ的な作品であるこちらを手に取った。
僕は、この人の作品は宇宙ものの短編しか読んだことがなかったのだが、絵が上手い*2だけあって、シチュエーションなど関係なく読ませる。『竜の柩』『暗黒神話』とは、ややタイプが異なり、あまり突飛な論理は無く、淡々と話が進む。しかし、「プロローグ的な作品」というのは物は言いようで、実は、この本の最大の特徴は「未完」であること。amazon評を見ても、未完であることに対する不満がボロボロ出ている。続きは『ヤマタイカ』を見てくれということらしい。結局、ヤマタイカを読むしかないか。
〜〜〜〜
『竜の柩』『暗黒神話』と共通する点は、古代史を解釈するガイド役と聞き手の役がいること。これによって、読者は「聞き手」に自己を重ねあわせやすくなり、話に入り込める。
反対に、物語そのものを扱った『ナムジ』では、解釈するガイド役は、あくまで安彦良和(作者)。そして作者が作品中に顔を出すことなどほとんどないから、実際には「ガイド」は為されず、「分かっている読者」はついていけても、一見さんはお断り、ということになってしまう。
特に難しい話題では、対話形式というのは非常に有効だなあと感じた。

*1:彼らは同時代に活躍した漫画家。Wikiの解説を読むと親友のようだ。

*2:諸星大二郎は、決して下手ではないけれども、本人は、「親友」星野之宣の作画を見て嫉妬しなかったのだろうか。