Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

水木しげる『のんのんばあとオレ』

のんのんばあとオレ (講談社漫画文庫)

のんのんばあとオレ (講談社漫画文庫)

以前読んだ『マンガ水木しげる伝』は分厚い文庫で上中下巻というボリュームもさることながら、まさに波乱万丈な人生が描かれており、かなりお腹一杯の読後感だった。
しかし、この本は、話の区切りがある程度しっかりしていることもあり、さっぱりと楽しめる話だった。水木しげるの独特なテイストは同じで、重なるエピソードもあるのだが、全体的な印象はかなり異なる。ラスト近くに、夜空に星(霊的な光も含む)が強く瞬くシーンがあるのだが、これは美しい。美しいシーンとしか言いようがない。『マンガ水木しげる伝』はエピソードのひとつひとつに圧倒されて、そういう素朴な感動に浸ることは少なかったように思える。
中心にあるのは、しげる少年(しげーさん=水木しげる)の、周囲の人間(特に、3人の女性)との出会いと別れ。貧困という状況があってこそ生まれるここら辺のエピソード(死別が多い)は、少し『蓮如物語』と重なる部分があるかも。
のんのんばあは、話の中心に立つことはなく、全てにおいてサポート役に徹し、妖怪の世界の道案内をしてくれる。妖怪の中では「小豆はかり」が頻繁に登場し、しげる少年の疑問に答える。
amazon評にも書かれていたが、『マンガ水木しげる伝』では、ただの極楽トンボ、ダメ親父だった父親が要所要所でいい味を出し、しげる少年の生き方の指針になっているところが面白かった。