Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

滑稽と言わせないエコライフ

(結論部が、やや無責任なまとめ方になっていますが、力不足です。許してください。)

エコライフは滑稽なのか?

環境問題に対しては「私たち一人一人のふだんからの心がけが重要である」とよくいわれる。
しかし、そういった個人としての地道な活動は、ときとして非常に滑稽に見える。
3月にデイリーポータルZで以下のような記事が評判(?)を呼んだ。冒頭の文章を引用。

日清食品が、カップを再利用できる詰め替え方式のカップヌードルを発売するらしい。
昨今の環境問題に対する消費者の意識の高まりを先取りする商品である。
確かに、食べ終わったカップラーメンの容器を捨てるときにいつも「もったいないな」という思いを感じてはいた。
ゴミが増えるのはよくないことだし、温暖化とかも超心配だ。
今度日清食品が発売するリフィル式カップヌードルは、繰り返し利用するための専用のカップを購入しなければならないという。
ちょうどスターバックスのタンブラーのような感じだ。
わざわざそんな専用の容器を買わなくとも、今までのカップヌードルの容器だって、食べ終わったあとまた利用できるのではないだろうか。

ここでは、「温暖化とかも超心配だ。」などと書かれているように、当然「滑稽」なことを承知で、意識的に「環境保護派」が演じられている。しかし、単純に笑い飛ばせないのは、その「滑稽」と「本気」が紙一重であることを、読む側も知っているからだ。少なくとも、この記事の主旨、つまり「専用のカップを買わなくても、今までの容器を再利用できるのでは?」という疑問は、間違っていないように思えるからだ。
この記事の結びの言葉は以下の通り。

人類は欲望のままに発展し続け、自分たちの暮らす地球の環境ことを考えもせず経済活動を続けてきたが、一度立ち止まって、いろいろ考えなくちゃいけないと思った。

冒頭と結末だけ読むと、まじめな内容の記事のように思えてくるのが素晴らしいところだ。(笑)
枕はここまで。以下本題。

エコドライブ10のススメ?

地球温暖化防止のための自動車利用として「エコドライブ」という言葉が多く使われる。
この言葉は知っている人が多いと思うが、具体的な行動として、どのようなものがあるのか挙げることができるだろうか?
チーム・マイナス6%のページから引用すれば以下の通りである。

1.ふんわりアクセル「eスタート」
2.加減速の少ない運転
3.早めのアクセルオフ
4.エアコンの使用を控えめに
5.アイドリングストップ
6.暖機運転は適切に
7.道路交通情報の活用
8.タイヤ空気圧をこまめにチェック
9.不要な荷物は積まずに走行
10.駐車場所に注意

いずれも言われてみれば、確かにその通り、という内容。これらのことに気をつければ、かなり燃費のよい走りが可能かもしれない。
しかし、だ。
たとえ自分が、常にエコドライブに注意を払いながら最新型のハイブリッド車を運転する根っからのエコロジストだとしても、隣の家の日産サニーに、「環境へのやさしさ」で勝てないことが往々にしてある。
それはなぜか?
これについては、山口浩さんのページが分かりやすい。

今日、じゅ業で、かんきょう問題についてべん強しました。ぼくたち人間は、たくさんのごみをすてたり、むだなエネルギーを使ったり、川や空にきたないものをたれ流したりしています。そのために、ごみしょ分場がいっぱいになったり、地きゅう温だん化が進んだり、川や空気がよごれたりしています。この問題をかい決するた
めに、いろいろな会社がかんきょうにやさしいものを作るようにしています。自動車も、ハイブリッドカーという、電気とガソリンを使う新しい車があって、これはガソリンをあまり使わなくてすむ、かんきょうにやさしい車なのだそうです。

ぼくは、すごいなと思いました。みんながハイブリッドカーに乗るようになれば、かんきょうおせんがなくなるかもしれない、と思ったからです。

このあと、「ぼく」は、自分の考えが誤っていたことに気づく。

ぼくはやっとわかりました。ハイブリッドカーだからといっていつも乗りまわしていたら、やっぱりかんきょうはよごれてしまいます。車がぜんぶハイブリッドカーになっても、車の数がどんどんふえていったら、やっぱりかんきょうはよごれてしまいます。だから、大じなのは、どんな車に乗るかということより、どれだけ車に乗らないですませるか、ということです。

ここで書かれているように、「環境にやさしい車」(環境を汚さない車)なんてないのだ。同様に「環境にやさしい運転」もない。「ノードライブ」が最もエコロジーに適っているのだ。

燃費のために1.5人乗り自動車

もうひとつ、別の視点がある。
以下、宋文洲のコラムより引用する。

今は亡き「きんさん、ぎんさん」を覚えておられますか。双子で共に100歳を超えたこのお婆さんに、ある記者が「今の時代をどう思いますか」と尋ねた時に返ってきた答えが、印象的でした。たしかきんさんだったと思いますが、「5人も乗れる車に、いつも1人か2人しか乗らないのはもったいない」と言われていました。

ここでは、環境影響を減少させるためには、製品の性能向上よりも生活スタイルの根本的な変更が大事だとし、きんさんぎんさんの、上記の言葉を引用したあと、以下のように述べている。

我々の最大なムダは、1人か2人で大きな車に乗ることです。いくら燃費を改善しても、1トンの鉄の塊を動かす限り、ガソリンは費やします。車両の燃費を
50%向上させるのは、大変な技術革新が必要です。しかし、2人が1台ずつクルマを運転するのを、2人で1台のクルマを運転するように変えるのは、技術革新は不要で単なる意識改革で済みます。

つまりは、4〜5人乗以上が主流で進んでいる日本の車社会自体が問題なのだ。*1
確かに、20年前と比べれば、明らかに核家族化が進み、世帯数が増えたことで車の数も増えた。住居ならば、実家から離れれば、それよりは小さな部屋を借りるのが当然のところを、車になると、実家より大きなものを志向する人も多い。その車に乗る人数は明らかに少ないのにも関わらず、だ。
安井至教授のHPでも、自動車の燃費を「2050年までに現在の10倍にする」ために必要なこととして、以下のような技術革新を想定している。

ガソリンエンジン車ではなく、ハイブリッドにしたところで、余り効率的でもないので、やはり純電気自動車にする必要がある。それだけで、約3倍は稼げる。

B君:後は簡単で、車重を落とす。都内などを見ていると、自家用車に乗っているのは、一人だけの場合が多い。基本的に、1.5人(=一人+子ども一人)乗りの車にして、多人数で乗る場合には、それを複数台つなげばよい。2050年までには、そんな技術だってできるだろう。1.5人乗りの車の車重を400kgにできれ
ば、それだけで3倍ぐらいは稼げる。これで合計9倍にはなる。もうちょっとでOK!

燃費改善のための技術革新の方向として、エンジン性能向上では限界があるため、「少人数車」の普及を想定せざるを得ない。裏を返せば、現在の「多人数車」が環境面から見れば非効率的、非合理的な乗り物であることを意味している。

まとめ

かように環境問題というのは、白か黒かがわかりにくい。ときに、その白黒がオセロのように逆転する、という意味では、健康食品の話題と似ている。
しかし、ここまでの文章を読めば分かるように(読まなくても分かるように)、ひとつはっきりしていることがある。
便利な生活は、いずれ続けられなくなる。
今のような暮らしを「便利」と呼ぶのならば。
先日の京都議定書シンポのニュースを見たら、日本経団連の御手洗会長が、産業界はギリギリまでの努力をしているから、国民ひとりひとりが努力してほしい、というような呼びかけをしていた*2が、上に文章を紹介した「宋文洲さん」的に言えば、とても無責任であるように感じる。
一方で、多人数乗りの「非合理的な」タイプの自動車を買い換えろと煽っておきながら、それはないだろ、と思ってしまう。
実際問題として、市民運動主導で省エネ型社会が広まるのは、もう無理だろう。
郊外型の大型店舗というのは、今でも増えており、それに依存して生活する、車なしではどうにもならない人たちがいる。環境に悪い生活スタイルに誘導したのは、むしろ、政治の無作為と、産業界の無配慮だとすらいえる。
したがって、政治と産業界が、今までのような「便利」を犠牲にしながら、新しく、魅力的な生活スタイルを提示する必要がある。それは、たとえば「1.5人乗り乗用車」かもしれないし、「在宅勤務」かもしれない。また、「環境税」のような、国民に負担を強いるものも当然必要だ。
政界も産業界も国民も、全てが妥協しなければならない。
京都議定書の目標は、排出権取引などの「裏技」を過剰に使うことなしには明らかに達成できないことがはっきりしている。
いわば逆境に直面する中、環境問題に対しては、もっと「覚悟」が必要なのではないか。


「エコライフ」なるものが、歯が浮くような胡散臭さを含み、何処か滑稽に見えてしまうのは、「覚悟」が欠けているからだ。
地震災害などで、カップラーメンの容器をくり返し使わなければ暮らしていけないような状況であれば、冒頭の話は、どこも「滑稽」ではない。
エコドライブをしなければ、お金がかかって耐えられないような生活、1.5人乗りの自動車でなければ、恥ずかしくて街を走れないような生活。そこに追いやってしまうような「仕掛け」がもっと必要だろう。

人類は欲望のままに発展し続け、自分たちの暮らす地球の環境ことを考えもせず経済活動を続けてきたが、一度立ち止まって、いろいろ考えなくちゃいけないと思った。

やはり、そうなのだ。
そして、それを小学生でも知っているのだから、大事なことを先送りにするのは、もうやめてほしい。*3

*1:なお、このコラムについて2chに貼られていたニュースはこちら。http://j.people.com.cn/2007/02/09/jp20070209_67729.html 笑ってしまったが、2chの悪意の引き出しの多さには、ほとほと感心する。

*2:http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20070418-00000065-mai-bus_all

*3:年金問題の先送りも同じ。これから貰うことになっている人には、何かの処置が必要だろうが、いったんリセットしてほしい。王様は裸のままで死ぬのか?