Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

伊藤潤二『ギョ』全2巻

ギョ 1 (ビッグコミックス)

ギョ 1 (ビッグコミックス)

ギョ 2 (ビッグコミックス)

ギョ 2 (ビッグコミックス)

これはものすごい傑作。*1
伊藤潤二作品は、映像化されているものが非常に多く、中でも数の多い「富江」シリーズが彼の代表作なのだろうし、自分もそう思っていたが、この漫画を読んだあとでは、意見が変えざるをえない。
伊藤潤二ものとしても、パニックものとしても最高級の傑作。
『ギョ』は、これまでの伊藤潤二作品の中でも、かなり映像的な作品で、絵としてのインパクトが強いものが多い。特に、家の中や路地、つまり陸の上で、体長4〜5mもあろうかというホオジロザメに主人公が襲われるシーン。怖いとか何とかというより、スタイリッシュ。このシーンを撮るだけのために、ハリウッドから声がかかったとしても全く不思議に思わない。奥浩哉GANTZ』で、仁王像など仏像を相手に、街の中でドンパチするシーンがあるが、これにひけをとらない。
一方で、後半部の地獄絵図は映像化不可能。不可能というのは、グロすぎて無理、という意味。誰も演じたがらないし、誰も見たがらない、そういうストーリーだ。とはいえ、サメやカジキから小さな魚、タコまでが、ところ狭しと「走りまくる」前半部も、リアルに映像化が可能とはとても思えないのだが。
スタイリッシュな映像、伊藤潤二ならではのトリッキーな展開が、2巻という短い話の中で次々と立ち現れてくる。ここまで密度の高い漫画もほかにはないだろう。

なお、2巻の特別収録「阿彌殻断層の怪」もワンアイデアながら、伊藤潤二にしか出来ない素晴らしい短編。見る人によっては、笑ってしまうようなユーモラスな内容と映るかもしれないが、人間の根源的な恐怖の部分をしっかり掴んだ内容といえる。
2巻の表紙がダメな人はオススメしないが、伊藤潤二が気になる人、面白い漫画を読みたい人には大推薦の二冊。

*1:Amazon評が悪いが、こいつら、わかってない!(笑)評価の分かれる作品ということでしょうか・・・