Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

清水良典『2週間で小説を書く!』

2週間で小説を書く! (幻冬舎新書)

2週間で小説を書く! (幻冬舎新書)

また、えげつないタイトルである。幻冬社新書の特徴なのだろうか?
とはいえ、さすがに自分も「2週間」で小説が書けるとは思っていないので、「期待」と外れる、という裏切られ方はなかった。むしろ、そのハッタリにどう収拾をつけるのか見てみたい、というのが、購入動機か。
〜〜〜

まず、ダメな点

実際、読んでみると、内容はわかりやすく、特に偏っているということもなく、楽しく読めた。
ただ、「心が冷めている」という言い方になるだろうか、駆り立てられるものが全く無い。そういう気持ちになって初めてわかったのだが、自分は小説家になろうと思ってではなく、自分の中の「小説家になってみたい」という気持ちを引き出したくて、この本を手に取ったのだ。内容云々とは別の部分に、自分が、この本に求めている部分があった。
よく考えてみると、最近読んだ二冊の本の感想で同じことを述べている。自分は『短歌という爆弾』を読んで、短歌を書きたくなったし、『きむら式童話のつくり方』を読んで、童話を書きたくなった。
そういう点は、この本には欠けていた。
この本の中には、作者の考えた「小説家になるために必要な技術」が、たしかに網羅されているかもしれない。しかし、作者のwant(教えたい)と、読者のwant(知りたい)には、実はレベル的なギャップがある。効果的に教えるためには、そのギャップを埋める=知りたいと思わせる仕組みが必要だと思う。
ギャップを埋める方法は、あるはずだ。
例えば、山田ズーニー『伝わる・揺さぶる!文章を書く』が熱いのは、作者自身が通ってきた失敗談や悩みがふんだんに盛り込まれているからで、それを読むことで、読者は作者に感情移入しながら「文章を書きたい!」というwantが高まる。結果として、作者の「教えたい」レベルまで、読者の「知りたい」レベルが高まるので、「教え」が効果的に機能する。これは『きむら式童話のつくり方』でも同じだったし、現在読んでいる俵万智『短歌をよむ』も同じことがいえる。
自分が小説を書きたい、と思ったときには役に立つ本かもしれないが、もっと軽い気持ちで、この本を買う人もたくさんいる。そういう購買層への配慮があればもっとよかったのになあ、と思った。

次に、よかった点

この本では、繰り返し「描写」の重要性について説かれるが、とても納得できた。

小説を書くのに最も大切な力とは、具体的な人物や行動、風景を、目の前にあるかのように再現する力、すなわち<描写>力である。
ところが、私たちは<描写>の文章を書くための訓練や指導を一度も受けた経験がない。P71

国語教育の中で、読書感想文や小論文を書く場面は山ほどあったが、確かに「描写」の訓練をしたことはなかった。したがって、本書で紹介される14のプログラム*1のほとんどが、「描写」の訓練となっている。
自分に「描写」力があるとはとても思えないから、小説家になるためには、まずそこから始める必要があるなあ。

おわりに

小説を書きたがる人は世に沢山いるということで、小説を書くためのハウツー本というのも溢れているようだ。今回、あと一押しが足りないと感じたので、そういう類書を読むのもいいかも。例えばコレとか気になります。(一週間かよ!)

1週間でマスター 小説を書くための基礎メソッド―小説のメソッド 初級編

1週間でマスター 小説を書くための基礎メソッド―小説のメソッド 初級編

*1:14個のプログラムを1日ずつこなすと「2週間」なので、このタイトルなのだ。しかし、一つ目のプログラムが、いきなり「リレー小説」だったりするので、作者自身には「2週間」という意識は毛頭無いと思われる。(笑)