Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

ICT、ITどちらが死語か?

タイトルのテーマについて調べてみると、面白いことがわかったので、研究成果を発表する。
研究の最後で、ICTと大原麗子の関係が暴かれるので乞御期待。

大恥かいた?

先日、知人の文章に、情報通信技術の意味で使われる「ICT」という言葉を見つけて、「一昔前は、ITとICTが併用されていたけど、今は基本的にはITを使うので、ICTは個人的には「死語」だと思うから使わないほうがいいのでは?」と自信満々に指摘した。
ところが、その後、以下のような事実を知り、大恥をかくのであった。

ICTとは、情報・通信に関連する技術一般の総称である。従来ひんぱんに用いられてきた「IT」とほぼ同様の意味で用いられるもので、「IT」に替わる表現として日本でも定着しつつある。

ICT(Information and Communication Technology)は、多くの場合「情報通信技術」と和訳される。IT(Information Technology)の「情報」に加えて「コミュニケーション」(共同)性が具体的に表現されている点に特徴がある。ICTとは、ネットワーク通信による情報・知識の共有が念頭に置かれた表現であるといえる。

情報の共有化という点において、ICTはITに比べても一層ユビキタス社会に合致した表現であるといえる。日本でも、2000年頃に盛んに提唱された「e-Japan構想」では「IT」が盛んに用いられたが、2005年を始点とする「u-Japan構想」ではもっぱら「ICT」が用いられている。総務省の「IT政策大綱」も、2005年までにはすでに「ICT政策大綱」に改称されている。

すでに海外では、ITよりもICTのほうがよく通る名称として通用するようになっている。インターネットにおいて「URL」(Uniform Resource Locator)が「URI」(Uniform Resource Identifier)という表現へ移行しつつあるように、「IT」も徐々に「ICT」へ移行していると見られる。

いやあ、世間知らずは怖い。
URLも、何となく「L」が「小文字」になっているなあ、といういい加減な(誤った)認識でいたら、いつの間にか「URI」の方がスタンダードになっているようだし、使い慣れないカタカナや略称はときどき意味や音を確認した方がいい、と改めて思ったのだった。

ICTの歴史

上で書かれているように、ICTが政府のお墨付きを得たのは「u-Japan構想」以降だという。これに関しては、総務省から『平成17年度 ICT政策大綱』というものが 平成16年8月に出ており、ここ3年くらいで大きく変化したようだ。なお、「u-Japan構想」は「e-Japan構想」以降の基本戦略となるもので「u」は「ユビキタスネット」を意味する。(ユビキタスという言葉も、自分としてはいまだに馴染まない言葉だ。)
ところで、海外では元々「ICT」の方が普及していたのであり、平成16年よりも前の段階から、「IT」という略称に違和感を持つ人もいたようだ。
以下に、平成15年3月時点での記事を引用する。

日本でITと呼ばれているものは、国際的には(世銀でも、国連やOECDでも)ICT:Information and Communication(s) Technology という用語が使われている。

Information の語義は in+form(ate) であって、内的+構造の形成、すなわち、ものごとを人に伝えることだ。何を伝えるかによって、理解や学習、誤解や曲解、共感や更なる情報要求を生じたりする。かたわら Communication という言葉は、「共有」を意味するラテン語に由来する。原義は community(共同の砦)の存続と発展を目的として、その成員が感情や意志、知識、思想を交流させること、である。
(略)
e-Japan IT戦略会議のいう「ITの利活用を推進する」行動は、ICT の「communication」に相当するものである。コミュニケーションの出発点は他者が他者であることを認めることからはじまる。推進のための官民協力とは、一方向に流れるものではなく「共に学び、共に支え、共に創造する」ものでなくてはならない。

この記事の発表時点(H15.3)では、ICTという言葉が全く普及していなかったことがわかる。
内容のポイントは、ICT(IT)によって可能になったことは「コミュニケーション」であるにも関わらず、IT技術の進展の結果、「一方向的なデータの氾濫」ばかりが目立っている状況を危惧するものとなっている。

なぜ「ICT」に変わったか?/なぜ「IT」を使っていたか?

ここでまとめると、ICTに変わってきた理由は、こんな感じか?

  1. グローバル化への対応(国際的に通用しない略称を用いることは損)
  2. コミュニケーション重視の流れ(ブログやSNSからweb2.0まで、双方向的な情報のやり取りの重要性が高まってきている)

ただ、国際的に通用しない略称であることは、当初からわかっていたはずなのに、何故、頑固に「IT」を使っていたのか、という問題は残る。
で、ぐぐる
簡潔に説明されているのが以下のページ。

なぜ日本だけ「IT」が使われているのか?

  官僚によると、ITの重要性をいち早く主張したのが通産省(現・経済産業省)だった。
  情報と技術(IとT)は通産省の所管だったが、通信(C)は郵政省(現・総務省)だった。
  そのため通産省の所管である部分のみを表記し、Cが抜け落ちた。
  ちなみに、「ICT」という表記(総務省所管のC)が使われているのは、総務省がらみの事業がほとんど。

このまま鵜呑みにしていい内容かどうかはよくわからないが、日本的な、あまりに日本的な*1ラクリに、言葉を失う。こういうくだらない縦割りの馬鹿話を聞くと、いつも何時代の話なんだと思ってしまう。なお、少し調べると、これらの分野を一括して「情報通信省」をつくろうという構想は、これまでもたびたび出てきているようだ。http://slashdot.jp/articles/07/01/14/0648213.shtml

ITは死なず 〜使い分け結論

さて、ここまで書いてきて、いろいろと錯綜してきたので、再度調べると、今現在も政府関連の文書で「IT」が使われていることを知る。考えてみれば、内閣官房の下に「IT戦略本部」が存在する限り、「IT」が無くなることは無いのだ。5月に発表され、今月下旬までパブリックコメントを募集している「重点計画2007(案)」ではICT、ITの両方が使われている。http://www.kantei.go.jp/jp/singi/it2/pc/2007keikaku_g.pdf
これらの資料を見ると、使い分けのルールとしてはこんな感じが妥当なのではないか?

  • ユビキタス」やコミュニケーション(ソフト的なもの)に関連する場合は「ICT」。
  • 光ファイバーなどのインフラ整備(ハード的なもの)については「IT」。⇒「IT機器」「IT環境」とは言うが「ICT機器」「ICT環境」とは言わない。

ということで、うまく結論づけることができなかったが、基本的には、まだ「IT」を使っても問題なく、「C(コミュニケーション)」をアピールしたい場合は「ICT」を利用する、というようなイメージでいいだろうか。

補足「少し愛して、ながーく愛して」

なお、上で、総務省経済産業省の覇権争いについて取り上げているが、官製談合の事件が相次いでいることなどもあり、官僚叩きは勢いを増すばかり。そんな中で、「ICT」が登場したのは、下に示すような官僚達の心の叫びが表れているのでは?
「自分たちを嫌うのは、もうやめてほしい。」⇒「愛してほしい」「ICTほしい」

         ナ ゝ   ナ ゝ /    十_"    ー;=‐         |! |!
          cト    cト /^、_ノ  | 、.__ つ  (.__    ̄ ̄ ̄ ̄   ・ ・
ミミ:::;,!      u       `゙"~´   ヾ彡::l/VvVw、 ,yvヾNヽ  ゞヾ  ,. ,. ,. 、、ヾゝヽr=ヾ
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ミ/    J   ゙`ー、   " ;, ;;; ,;; ゙  u ヾi    ,,./ , ,、ヾヾ   | '-- 、..,,ヽ  j  ! | Nヾ|
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ヾヽ     l      `  `ヽ、 l  ./  ヽ      l         )  ,; /   ,'    '^i 

嘘です。
ちなみに中見出しタイトルはサントリーウイスキーレッドのCMでの大原麗子の台詞。
http://www.suntory.co.jp/enjoy/cm/log/na012.html

*1:よく見る、この表現の元ネタは何なのかご存知の方は教えてください。芥川龍之介文芸的な、余りに文芸的な』?