Yondaful Days!

好きな本や映画・音楽についての感想を綴ったブログです。

名古屋「でんきの科学館」の素晴らしさ

久しぶり登場の、このタグ[youtaful_days]。
もともと、仙台周辺の施設紹介的な内容を目指していた部分もあり、ブログの主要コンテンツのひとつだったが、いろいろと事情があり更新を怠っていた。
いろいろと書こうと温めていた企画もあるのだが、それは置いておき、先日の日曜日に、あまり期待せずに訪れた「でんきの科学館」(最寄り駅は名古屋駅から一駅先の伏見駅*1が、予想外に執筆欲をかき立てる施設だったので、紹介してみる。

私たちのくらしの中で欠かすことのできない電気。この電気をはじめ環境やエネルギーについて、さまざまな角度から探る「6つの展示室」、科学のふしぎを解き明かす「実験ショー」、自分の顔を取り込んでクイズやゲームに挑戦する「大画面シアター」など、楽しさいっぱい!

実は、「入場料無料」という部分から、やや侮っていたのだが、行ってみると、子どもから大人まで楽しめる、こういった施設としてのひとつの理想形を見た気がした。
電力会社のPR施設という割りには「安全」の押し売りという感じもしなかったし、ニュートラルに、電気利用者が興味を持つ点を網羅しているという印象を持った。
実際には、ようたと一緒ということもあり、施設を遊び倒したということは全く無く、表面を撫でた程度なのかもしれないが、一応、自分が「でんきの科学館」に好印象を抱いた理由を考えてみた。

子どもに媚びない説明

最も気に入ったのは「媚びない」点だ。
例えば、海岸から街を経て山までの巨大なジオラマジオラマの中には電車が走る。

ジオラマを見ると、子どもが一番操作したがるのは、この電車の進行−停止だ。
名古屋市科学館の電車コーナーでは、子どもが奪い合いをしていた人気ポイントである。
しかし、ここは「でんきの科学館」。
ここで「中の人」が説明したいのは、電車ではなく、発電施設である。
したがって、外部の操作盤でコントロールできるのは下の写真通り。

硬派すぎる・・・。
これに代表されるように、自分たちが説明しようとするものを曖昧にしない誠実さを感じた。過剰に簡単な言葉を選んでかえって説明を意味不明にする「わかりやすさ」など微塵もない。

また、電力会社のPR施設ということもあり、原子力関連は充実している。
何となく明るい感じの「プルサーマル」の紹介の隣には「高レベル放射性廃棄物」「低レベル放射性廃棄物」の展示があり、ドラム缶のレプリカが置いてあった。ちょっと怖い・・・。(自分の、原子力に対するスタンスは、原子力賛成*2プルサーマル反対(もしくは態度保留)。*3

また、別の場所には、バーコードリーダーみたいなもので、食物中に含まれる放射能量を測るブースがあった。中国製食品の検査官になった気分で、少し緊張する。
針が大きく触れた「干しシイタケ」には驚いたが、もちろん全く問題は無い。*4

なお、電線、ガイシから鉄塔の紹介まで、架空送電をフィーチャーしたマニアックなコーナーには、『鉄塔武蔵野線』を思い出し、少し心がときめいた。(下の写真)

でも、楽しそうな子どもたち

上に述べたように、結構大人への訴求力の高い資料がズラリと並ぶが、子どもたちは楽しそうに遊んでいる。それがいい。
彼らは回せるものは、ぐるぐる回す。*5(ほとんどの子が、自分が手でハンドルを回した結果として、電球が光っていることに気づかないほど、無心で回していた。)
 
子どもたちへのアピールは、「説明」というよりは、ボタンやレバーなどの部分が担っており、それがことごとく成功していたように思う。
また、PRのお姉さんが説明する「磁石の実験」もとても面白く、子どもたちはクイズに大盛り上がりだった。

まとめ

先日読んだ、畑村洋太郎『技術の伝え方』でも書かれていたが、「分かりやすい説明」とは、説明する側のテクニック以上に、情報を受ける側の受け入れ態勢の問題が大きい。
勿論、電気というテーマ故に可能な部分もあるのだが、情報の受け手が、自分の生活を振り返って興味・関心を持たせるような仕掛けが多かったことが、今回の好印象の理由のひとつめといえる。
そしてもう一つ、他の人が楽しそうにしていたという事実が、施設への満足度を上げたということは確実にいえると思う。
広大なフロア面積を誇る名古屋市科学館国立科学博物館では、疲れた表情を見せる親子も多かったが、ここでは、皆が興味を持続して施設を見ていた。つまり、こういった施設は、ある程度の適正な規模があり、そのひとつの答えが「でんきの科学館」の大きさなのではないかと思った。
これは、今後の科学館めぐりのメルクマールになりますね。


上はおまけ。エルゴンコーナー横の書庫は、閲覧するのに許可(記名による申請?)が必要な、原子力関連資料。中部電力の男気を感じる。

*1:本当は近くにある名古屋市科学館プラネタリウムを見るつもりだった。

*2:中畑清もCMで喋っていたように、30%程度を原子力発電に頼っている日本において、他に有効な手段がないのに原子力に反対するのはナンセンス。しかも、地球温暖化対策としても原子力発電は効果がある。

*3:プルサーマルについては、安全性に関する国際的な共通認識が得られているように思えない、専門家の間でも意見が分かれているように見える、ということで反対。今、思い出したが、高木仁三郎の影響が大きいのかも。

*4:食物中に含まれる放射能量については、コチラのpdfなど

*5:長井秀和のネタで「ジャッキー・チェンの周りに机や椅子を置くな!」というのがあったが、「子どもたちの目の前にハンドルを置くな!」という感じだ。